「トランシルヴァニア」
真実の愛を求め「世界の果て」まで女は行く

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   ロマ(ジプシー)の母を持つトニー・ガトリフ監督。「ガッジョ・ディーロ」や「愛より強い旅」で注目されるフランスの監督だ。絶えず流浪の民・ジプシーを描いて来たが、女性の主人公はこの「トランシルヴァニア」が初めてで、「真実の愛」を求めて世界の果てまで追いかける頑固なロマの女性を描いている。


   舞台はトランシルヴァニア。今はルーマニアの領土だが、ルーマニア人、ハンガリー人、ドイツ人、アルメニア人、ユダヤ人が住みつき多民族が共生する。ロマの人口が一番多い国だと言う。映画の中でも色んな人種に出会い、様々な言葉や民族衣装、お祭り、音楽が紹介される。ギリシャ正教だろうか主人公に牛乳を浴びせながら、村の司祭が怪しげな「悪魔払いの儀式」を行うのもエキゾチック感を盛りたてる。

   突然姿を消した恋人の男ミランを探して、ジンガリナ(アーシア・アルジェント)は親友マリー(アミラ・カサール)と、ミランの故郷トランシルヴァニアへやって来る。訪ね当てたミランの実家は廃屋。家族は離散して行方は分からない。ミランが音楽をやっていたことを頼りにその楽師仲間を聞きまわり、ようやく彼を見つけるが、ミランは「もう愛してない」とジンガリナを突き放す。ミランの子供を宿している彼女は絶望の淵へ。自分のことを愛してくれているマリーとも別れて異国の地で何かを見つけようとする。

   途中で出会った骨董を買い集める男、チャンガロ(ビロル・ユーネル)は彼女に興味を持ち面倒を見始める。チャンガロは気が狂ったような言動を弄するジンガリナを見て、悪魔が取り付いていると信じるのが可笑しい。悪魔を追い払うため年寄りが集まり、奇妙な木版や鉦を叩き、聖書を朗読し牛乳をかける。

   おかしいのは儀式ばかりでない。帽子を被った髭もじゃの男の群れ、黒い服だけの村もあれば派手な民族衣装の村もある。背後に絶えず流れるエキゾチックな音楽。ジンガリナもロマの衣装をつけるが、全編を通して「頑固な女の意地」を描く作品として評価できる。果たして彼女は異国の地で救いを、平安を、そして愛を見つけることが出来るだろうか?

   主役のジンガリナ役はイタリア女優・アーシア・アルジェント。「マリー・アントワネット」「トリプルX」などアメリカ映画にも出演しているし、04年には監督・脚本・主演の「サラ。いつわりの祈り」が公開された。スピード感のある演出に大胆なカット、手持ちカメラと、ガトリフ監督は馴れた手法で作品をまとめている。この映画は06年のカンヌ映画祭のクロージング作品となった。

恵介
オススメ度: ★★★★☆
「トランシルヴァニア」(TRANSYLVANIA)
2006年フランス映画、日本スカイウェイ、1時間42分、2007年8月11日公開
監督・脚本:トニー・ガトリフ
出演:アーシア・アルジェント / ピロル・ユーネル
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