ヨロヨロしながら芸をする「ゾウのはな子」に涙、涙、また涙

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   フジテレビがこの夏、力を入れた、ゴールデン枠2時間を使っての大型ドラマ企画「千の風になって」。3つの話が放送されたのだが、第1話「家族へのラブレター」は見なかった。大ヒット曲「千の風になって」に便乗したお涙頂戴物かと思ったのだ。タイトルから、家族を残して難病で亡くなった人の見るのもつらいお話だろう、と敬遠してしまった。

   でも、第2話の元になった「かわいそうなゾウ」と、第3話の原作マンガ「はだしのゲン」は、昔読んで知っていたので見てみた。

   第2話「ゾウのはな子」は、上野動物園での実話が元になっている。昭和18年8月、食糧不足もあり、激しくなってきた空襲時の混乱を避けるためという理由で、猛獣はすべて処分された。 飼育員に扮した反町隆史と北村一輝が、まるで本当の飼育員みたいにゾウに慣れていたのに感心。しかしそれも、もちろんゾウたちの演技力あってのもの。餓死させられる運命でエサがもらえず、いつものように芸をすればエサがもらえるかと、ヨロヨロしながら懸命に芸をして見せる例のシーンでは、もう涙、涙、また涙。

   しかし、涙を拭いているうちに「怒りのカモノ」は憤然。なんで餓死なんかさせるんだ。ひと思いに射殺してやったらどうなんだ。トラやライオンなど他の猛獣たちにも毒入りのエサを食べさせるなんて。それも慈しんできた担当の飼育員にやらせるなんて――。軍の命令なら、軍隊が来て責任を持って射殺しろ。

   もしかしたら、動物のために使う武器弾薬がなかったのかしら。そんな状態でよく戦争を続けようとしたもんだ。

   と、怒りが収まるヒマもなく、第3話「はだしのゲン」。これは前編・後編合わせて4時間の大作だ。広島で貧しいながらも懸命に暮らす下駄職人の一家を中心に、原爆が落とされる前後の庶民生活が、原作者中沢啓治の体験を元に描かれる。きれいごとでなく、人間の卑しさも悲しさもそのままに。

   ゲン(小林廉)と弟の信次(今井悠貴)の演技が素晴らしい。昭和20年の子供がそのまま抜け出して力いっぱい生きているようだ。

   それにしても当時の食糧不足は、見ていてボー然とするほど。重ねて言うが、子供にサツマイモ1本をめぐって殴り合いさせといて、よく戦争を続けようとしたもんだ。

   「子供と動物にはかなわない」とよく言われるが、まったくその通りのスペシャルドラマ2本でした。頻繁に流されるテーマ曲の「私のお墓の前で泣かないでください~♪」が耳について、しばらく離れなくなってしまったのが難だったけど。

   ※ドラマスペシャル・千の風になって「ゾウのはな子」「はだしのゲン」(フジテレビ系・2007年8月4日、8月10・11日)

文   カモノ・ハシ
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