「ベクシル-2077日本鎖国」
日本に潜入した女兵士が見たものは・・・

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   曽利文彦監督の名前が知られたのは02年の初監督作「ピンポン」。卓球に打ち込む高校生の熱意を描くスポーツ青春ドラマだった。「タイタニック」のVFXで名を馳せた曽利の名前は、ピンポンの球のスピードと選手のアクロバティックなスマッシュの特撮で主演の窪塚洋介や中村獅童と共に注目された。

(c)2007「ベクシル」製作委員会
(c)2007「ベクシル」製作委員会

   そのCG技術が本作ではアニメとして活かされている。リアルな画像は「ピンポン」の実写と変わらないほど迫力がある。ベクシル役の声、黒木メイサもレオンの声優、谷原章介も、その顔や姿は本人に似せながら更に美男美女でクールにアニメで描かれている。数え切れない屋台が並ぶ雑然としたマーケットは戦後の闇市を思わせる迫力。ロボットやヘリコプター、装甲車などは重く冷たい質感が表現されている。

   21世紀初頭の日本は、人類の生命に福音をもたらしたバイオ・テクノロジーとロボット産業で、世界の市場を独占する。しかし2067年、これらの技術を国連が厳しく規制しようとしたため、日本政府は国連を脱退して他国との関係を絶ち、ハイテク技術を駆使した完全な「日本鎖国」を断行する。今から75年前の1933年3月、満州国建国を世界から非難され国際連盟(国際連合の前身)を脱退した日本の姿が思い浮かぶ。

   「鎖国」後の日本は、海外からは不思議なヴェールに包まれた国と見られ10年が過ぎた。米国特殊部隊SWORD所属の女性兵士ベクシルは、日本への潜入に成功する。しかしそこで彼女が見たものは見渡すばかりの荒涼とした土地。ハイテクでどんなに素晴らしい都市が出来上がっているかと想像したベクシルを裏切る光景だった・・・。

   街は城壁に守られている。城壁の外ではベクシルたちを襲って来る尺取虫のお化けみたいな鉄片群のチューブが不気味。次から次へと無数に現われベクシルたちを襲う。フル3D‐CGの画面は凄い迫力だ。なにか「マトリクス」に似た雰囲気で物語は展開する。

   どうも国連を脱退して孤立し、関東軍の暴走で戦争に突入した1930年代の大日本帝国を思い出す。その結果として、この鎖国を支配している軍団から日本の市民を救い出すのは米国なのだから。今更それを見せられても、何か忸怩たる気持ちになる。それにしてもハイテク技術の行き着くところは全体主義と言うことか。個人を孤立させ、個人の幸せを奪う。

   この映画はこの8月にスイスで開催された、ロカルノ映画祭の開幕作品として上映された。この映画祭は大作ではないが実験的映画を紹介することで知られる。日本映画としては01年に「ファイナル・ファンタジー」が上映されて以来である。

恵介
オススメ度: ★★★☆☆
2007年日本映画、松竹配給、1時間49分
監督・脚本:曽利文彦
声の出演:黒木メイサ / 谷原章介 / 松雪泰子
公式サイト:http://www.vexille.jp/
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