「題名のない子守唄」
イタリアの巨匠トルナトーレの傑作スリラー

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   「ニュー・シネマ・パラダイス」で感涙を流させ、「海の上のピアニスト」「マレーナ」と立て続けに観客を魅了した脚本・監督のジュゼッペ・トルナトーレ。情緒を更に盛り上げる音楽のエンニオ・モリコーネ。イタリア映画界の巨匠のコンビが作り出した新作が、この「題名のない子守唄」だ。前作「マレーナ」以来6年になるこの作品は、今までとは違うスリラー仕立て。甘くロマンティックで郷愁を帯びた従来の作品群からガラリと変わった。

(C)2006 MEDUSA FILM-MANIGOLDA
(C)2006 MEDUSA FILM-MANIGOLDA

   ウクライナから新天地を求めてイタリアに密入国したイレーナ(K・ラパポルト)。映画冒頭、薄暗い部屋で、仮面を着け全裸で男たちに審査されるシーンから不気味だ。思惑に反して性の奴隷にされるのだが、その場面はフラッシュバックで瞬間見せられるだけで詳細は分からない。売春組織で奴隷のときは金髪だったイレーナが黒髪に変身し、地味な服装で長距離バスからトリエステの市街に降り立つ所で実質的に物語がスタートする。カメラは売春組織を抜け出した彼女の行動を追う。

   高級アパートの管理人(A・ヘイベル)に近づき仕事が無いかと尋ねるイレーナ。外国人だから無理だという彼に、給与の3割のキックバックを条件に必死に頼み込む。アパートも、紹介した不動産屋自身が家賃も高いしうるさいから止めろ、と忠告するのを無視して借りる。ただ高級アパートの筋向いという立地条件だけで。そして、いろんな手段を使ってアダケル家のメイド、ジーナ(P・D・エスポスティ)と親しくなる。

   何故アダケル家に興味を持つのか観客は分からぬまま、イレーナはジーナを事故に遭わせ病院へ送り込むと、今度は自分がメイドになり、アダケル家に入り込む。その家には強情で人に馴染まないテアという小さな娘がいた・・・

   流石にトルナトーレ、寸分の誤差も無く、わき道にも逸れず、飽きもさせずに、物語の奥底に沈む秘密に一直線に観客を導いて行く。モリコーネの音楽はミステリアスなメロディを奏で、ストーリーを盛り上げる。いつもは一つのテーマ曲だが2つの曲が場面に応じて流れる。

   謎を秘めたイレーナを演じるクセニア・ラパポルトは未知の女優だが、サンクトペテルブルク生まれのロシア人。地味な顔立ちだが、チェーホフなどの舞台劇での演技力は確かなものだ。悪役ムッファを演じるミケーレ・プラチドはスキンヘッドに憎憎しげな表情で観客をも怯えさせる。姑息なアパートの管理人マッテオのアレッサンドロ・ヘイベルは「暗殺の森」から馴染みの顔だ。トト(ニュー・シネマ・パラダイス)以来子供の使い方のうまさがトルナトーレの身上。幼いテア(C・ドッセーナ)の反抗的な目が次第にイレーナを慕う表情に変って行く描写が上手い。

   久しぶりに充実したイタリア映画。流石!トルナトーレ、見事!モリコーネ。見終わって満足感一杯の映画だ。

恵介
オススメ度: ★★★★★
題名のない子守唄(LA SCONOSCIUTA)
2006年イタリア映画、ハピネット配給、2時間1分、2007年9月15日公開
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:クセニア・ラパポルト / ミケ―レ・プラチド / クラウディア・ジェリーニ
公式サイト:http://www.komoriuta-movie.com/
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