「ミス・ポター」
ピーターラビット生みの親の波乱に満ちた半生

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   青い上着のウサギ君「ピーターラビット」を知らない人はいないが、その作者のことはほとんどの人が知らない。少なくとも私は知らなかった。この「ミス・ポター」はその波乱に満ちた半生を描いた伝記映画だ。

(C) UK Film Council/Hopping Mad Distribution(IOM)Ltd 2006 All Rights Reserved.
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   主人公はロンドンの富豪の娘ビアトリクス・ポター(英語の発音はポッター[Potter]であのハリー・ポッターと同じ)。ときは20世紀初頭。まだヴィクトリア朝時代の男性優位の考え方が社会に根強かったころ。自作の絵本を出版にこぎつけるまでの、女であるがゆえの苦労と灼熱の恋、その終わりを描く。彼女が描いたピーターラビットとその仲間の動物たちの物語はシリーズ23冊になり、111カ国で1億部を売り上げているというからハリー・ポッターも真っ青だ。

   父親が富豪の弁護士で、何一つ不自由を味わったことが無いビアトリクス(レニー・ゼルウィガー)。30歳を過ぎ、結婚しろとヤイノヤイノ言われるが、彼女は絵を描くアーティストとして生きたかった。避暑地の湖水地方で観察した動物たちを絵本にしていくつもの出版社に持ち込む。どこも引き受けないが、ようやくウォーン兄弟の出版社が承諾してくれる。本の価値を認めた末弟ノーマン(ユアン・マクレガー)と打ち合わせを重ねるうち、二人は恋に落ちる。しかし、ビアトリクスの両親は「身分が違う」「商人とは結婚させない」と大反対。結局父親が折れて、避暑から戻る2か月後でも心が変わらなければ許す、と。二人は手紙で愛を交わし合うが、突然ノーマンからの手紙が来なくなる。

    主人公ビアトリクスに扮するのはレニー・ゼルウィガー。美人ではないが演技が上手く、「コールド マウンテン」でアカデミー助演女優賞を受賞している。相手役ノーマン・ウォーンには「スター・ウォーズ」のユアン・マクレガー、その姉ミリーには「奇跡の海」のエミリー・ワトソン。監督は「ベイブ」のクリス・ヌーナン。

   ヌーナンだから、ベイブみたいに動物たちが絵から抜け出て活躍するかと期待するが、絵の中で少し動くだけ。彼女の心を反映して動物たちが話や忠告をしたらもっと面白いのに残念だ。

   20世紀初頭のヴィクトリア朝の雰囲気を残す上流階級。女は男に従うもの、父親の権威は絶対という環境の中で自由に生きようとする主人公。先ず先立つもの、お金を心配するビアトリクスが財産を管理する弁護士に相談すると、ベストセラー作家のあなたの印税なら何十軒もの家が買えます、と。男の支配を逃れ自由を獲得できる痛快な場面だ。

   ピーターラビット・シリーズの動物たちの可愛い絵もさることながら、子供の手のひらに納まるサイズ、読みやすい短編の絵本と、彼女はマーケティングにも優れていた。だが母親は最後まで娘が流行作家だとは認めない。独立して自由に作家暮らしを続ける彼女の活動は自然を残す運動へ繋がる。確かに恋人との経緯は唯一の蹉跌かも知れないが、ドラマとしてもう少しアクセントがあり、劇的な描き方が出来なかったか。凡庸な展開に飽きが来る。

恵介
オススメ度: ★★☆☆☆
2006年アメリカ映画、角川映画配給、1時間33分、2007年9月15日公開
監督:クリスチャン・ヌーナン
出演:レニー・ゼルウィガー / ユアン・マクレガー
公式サイト:http://www.excite.co.jp/cinema/miss-potter/
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