2018年 7月 20日 (金)

「サルバドールの朝」
「死刑執行」までの日々、涙無しには見られない

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   この「サルバドールの朝」は、昨年初めに公開された「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」とイメージが重なる。「白バラ~」は1943年第二次大戦末期のドイツ、ヒトラー独裁に反抗して「自由」を求めた21歳の女子大生ゾフィーの物語。大学構内でビラを配ったことで捕えられ処刑される。一方、「サルバドールの朝」の時代はその30年後の1973年、独裁政権末期のスペイン。階級の無い社会を夢みて、独裁政権下での「自由」を求めた25歳の青年サルバドールが処刑される。この作品は政権末期の機密記録にある、実際に起こった青年の悲劇を映画化したものだ。

(C) Mediapro- Future Films
(C) Mediapro- Future Films

   スペイン独裁政権はヒトラーやムッソリーニの盟友フランコ将軍の政府だ。僅か30年前なのにヒトラー的政権がヨーロッパの一角を占めて暗黒の支配をしていたことにも驚く。

   主人公サルバドール・プッチ・アンティック(ブリュール)は誰からも好かれる明るい青年。カタルーニャ人の彼は長く続くフランコ独裁政権に対して、仲間とともに自由を求める声を挙げる。同じ大学に通うクカ(ワトリング)は知的で美しく理想的な恋人だ。サルバドールの生活が変ったのは、反政府の活動資金のため銀行強盗をして、犯罪者として警察に追われる身となってから。地下に潜り、仲間と強盗を重ねたある日、バルセロナのカフェで警察と銃撃戦になり、サルバドールの銃弾が若い警官の命を奪う。

   映画は、裁判で死刑宣告を受けてから処刑される朝までを克明に描く。独裁政権を非難する外国への延命願いや助力。サルバドールの革命の同志や家族、特に一番下の13歳の妹マルソナ(A・ロス)のことに触れる。涙無しには見られないシーンの連続だ。

   「グッバイ、レーニン!」のコミカルで明るい青年を演じたドイツの若手俳優ダニエル・ブリュールがサルバドールを演じる。流暢なスペイン語のセリフをこなしている。陽気な青年が人生の終わりを強制的に迎えさせられる無残さを深刻に演じている。恋人クカは「トーク・トゥ・ハー」で眠れる女性を演じたレオノール・ワトリング。サルバドールに必死に手を差し伸べる弁護士アラウは「オープン・ユア・アイズ」のトリスタン・ウヨア。

   鉄の輪と棒で首の骨を折るという残酷な処刑をされた主人公を、英雄でも殉教者でも無く淡々と描くことで、より深い感動に持ち込んでいるウエルガ監督の手法は高く評価されても良い。ボブ・ディランの「ノッキン・オン・へヴンズ・ドア」の主題曲が耳に残る。

恵介
オススメ度: ★★★★☆
サルバドールの朝(SALVADOR)
2006年スペイン映画、CKエンタテインメント配給、2時間15分、2007年9月22日公開
監督:マヌエル・ウエルガ
出演:ダニエル・ブリュール / トリスタン・ウヨア / レオナルド・スバラグリア
公式サイト:http://www.salvadornoasa.com/
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