「さらばベルリン」
古き良き映画「第三の男」や「カサブランカ」へのオマージュ

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   日本の映画ファンは第2次大戦中、アメリカやフランスなどの「敵国映画」渇望症になっていた。だから終戦直後に入って来た作品群に飛びついた。「キューリー夫人」「誰がために鐘は鳴る」「ラインの監視」「第三の男」。その中でも一番良かったと(筆者もそうだが)「カサブランカ」を挙げる人は多い。この「さらばベルリン」はこれら40年代映画へのオマージュだ。

(c)2007 Warner Bros. Entertainment Inc.
(c)2007 Warner Bros. Entertainment Inc.

   舞台は1945年、ポツダム宣言前後のベルリン。画面は白黒で当時のニュース・リールをふんだんに織り込み、「カサブランカ」と同様に、ロケでなくハリウッドでセットを組んで情景のリアスクリーンの前で撮影している。トーンは暗いフィルム・ノワールで「第三の男」のようにライトで下から煽る。下水道を走るシーンはオーソン・ウェルズの逃亡を思わせ、飛行場の格納庫から歩く主人公の二人や乗り込む双発飛行機などは「カサブランカ」のエンディングに酷似している。

   大戦でバラバラになった二人の恋する男女。戦後再び、ポツダム会談の取材記者としてベルリンに戻ったジェイク(G・クルーニー)は恋人レーナ(C・ブランシェット)を探すが、ボガートのリックやバーグマンのイルザと違い、意外と簡単に再会する。ジェイクの運転手タリー伍長(T・マグワイア)がレーナの現在の恋人であり、彼女に売春をさせているヒモだったのだ。

   だがある日タリーは、懐に10万マルクの金を抱いたまま射殺体で発見される。ジェイクの丹念な取材で謎に包まれたレーナの過去と全体像が徐々に見えて来る。レーナはユダヤ人で半年前に死んだ夫はナチ党員。夫は科学者の秘書でナチの悪行の全ての秘密を知っていた。

   原題「THE GOOD GERMAN」にこの映画の肝がある。レーナの元夫が過去を暴こうとする「善きドイツ人」なのだ。ストーリーは複雑に絡み、ユダヤ人問題、ラブロマンス、裏切り、秘密、スパイなどの要素で盛り上がり、最後の告白の大どんでん返しまでドラマティックに展開する。

   監督スティーブン・ソダーバーグ、主演ジョージ・クルーニーの「オーシャンズ」シリーズのコンビ。がらりと変わった画風で年代物スリラーに仕上げている。大戦、ナチ、ユダヤ人などのバックグラウンドを知らない今の若者に受け入れられるかどうかが懸念される。

恵介
オススメ度: ★★★★☆
さらばベルリン(THE GOOD GERMAN)
2006年アメリカ映画、ワーナー・ブラザース配給、1時間48分、2007年9月22日公開
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジョージ・クルーニー / ケイト・ブランシェット / トビー・マグワィア
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/thegoodgerman/
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