「東京国際映画祭」開幕 「ガンジー、わが父」が光る

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   1988年からスタートした東京国際映画祭。今年で20回を迎えて10月20日から28日までの9日間、開催される。BUNKAMURAを中心にした渋谷に加え、六本木ヒルズの劇場も含めて観客は30万人を集める。


   しかし8年遅れてスタートした釜山国際映画祭に、アジアでのフェスティバルの中心を奪われて最近ではやや落ち目なのは否めない。アジア映画売買のマーケットにしても、参加作品の注目度にしても釜山には及ばない。例えばアジア映画人に与えられる「マン・オブ・ザ・イヤー」などはどうして東京で始めなかったか? 映画祭に付随したマーケット「TIFFCOM」は日本映画の売り込みが主だが、釜山は東南アジアの映像を売る市場でもっと大きい。20回を記念して特別企画「映画が見た東京」が目玉になっているが、「ALWAYS続・三丁目の夕日」を筆頭に時代と共に変化する東京を描いた戦後の映画を上映する。釜山は世界に向けて「拡散」しようとしているが、東京は内へ向けて「収斂」しようとしているように思える。

   「東京サクラグランプリ」を争うコンペティション、参加作品15本のうち13本を試写で見た。世界各国の新人監督による作品群だが、中でもインドの「ガンジー、わが父」が良かった。インドの父、ガンジーのことは誰でも知っているが、その不肖の息子のことは誰も知らない。息子の視点で父を描く。父の信頼を裏切り、酒と金に溺れ借金返済のためにイスラムへの改宗をして父を嘆かせる。父の死から5か月後、身元不明の行き倒れで息を引き取る。

   他にポーランドの6歳の男の子が別れたパパを追う「トリック」が光るし、エレン・バースティン演じる老女が自分の来し方を振り返るカナダ映画「ストーン・エンジェル」にも感動する。9.11を被害者の家族の立場で描くアメリカ映画「再会の街」は特に印象に残る。トラウマに悩む主人公をコメディアンのA・サンドラーがシリアスな演技で熱演している。日本から参加の「ハブと拳骨」はベトナム戦争中の返還前の沖縄を描いているが、未熟な映画。中井庸友監督、思い余りて言葉も多く、浅薄な上すべりの作品になっている。

   映画祭のオープニング作品は、そのフェスティバルの成功を占う大事な冒頭イベントだ。第一回は黒澤明の「乱」で幕を開け、世界の注目を集めた。今年は「ミッドナイト イーグル」。これが愚にもつかない駄作。米軍所属のステルス戦闘機が北朝鮮工作員の仕掛けた爆薬で北アルプス山中で消息を絶つ。スクープのため、戦場カメラマンの主人公と後輩の新聞記者が山を登る。墜落したのは米軍所有のステルスで、政治的に禁止されている核兵器を積んでいるのに、米軍はいささかも捜査活動に従事しない。本土から特殊部隊を派遣するのに5日掛かると。機動力を武器とする米軍が5日なんてありえない。それに山中に爆破されて不時着した機はあまり壊れていない。超音速で航行し、しかも激突しているんだよ。主人公たちが潜り込む機内はまるで火事で半焼したしもた屋みたい。操縦席はお粗末な設備だ。

   亀山千広PのTV特番映画は見せるに値しないとは言え、こんな映画をオープニングに持って来なければならないほど邦画は作品が払底している。映画祭に集まる世界の映画人たちの東京への評判は更に落ちるだろう。

恵介
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