「象の背中」
役所広司が好演「余命半年」をどう生きるのか?

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   原作は秋元康。おにゃん子クラブのプロデュースや作詞家として若い世代を取り込んだかと思うと、「着信アリ」などの映画でホラーの世界に新機軸を持ち込む。そしてこの「象の背中」、ガンで死ぬ運命の主人公を巡る家族愛の愁嘆劇。51歳を越えて尚、時代の風を捕えるアンテナは確かだ。

(C)2007「象の背中」製作委員会
(C)2007「象の背中」製作委員会

   象は自分の死を察すると、仲間から外れ姿を消して密かに死ぬという。肺癌で背中に強烈な痛みを訴え苦しむ主人公、藤山幸弘(役所広司)は死ぬときは一人でなく、家族に見守られて死にたいと願う。

   幸弘は中堅建設会社の部長。郊外に大きな住宅街を開発するBプロジェクトの責任者だ。背中の痛みを覚えた検診の結果を、医者から言い渡されるシーンから、映画は始まる。肺癌で余命6か月、末期に入り転移をしているので手術は無理。幸弘は延命策の抗がん剤の投与も拒否して「死ぬまで生きたい」と願う。死ぬまで人間らしい高い質の生活(QOL)を維持したい。仕事は変わらず続け、大学生の長男、俊介(塩谷瞬)にだけは打ち明ける。23年間の結婚生活を送っている妻の美和子(今井美樹)にも、高校生の長女、はるか(南沢奈央)にも内緒だ。

   死ぬ前にすべきことは一杯ある。初恋の人(手塚理美)に当時の想いを打ち明けたり、喧嘩別れした高校時代の親友(高橋克美)に会い和解する。潰されかかったBプロジェクトを、役員に噛み付き社長に直訴して延命させる。そして何よりも長年の愛人(井川遥)には包み隠さず幾ばくかの余命を告げる。12年も帰らなかった実家の兄(岸部一徳)に会っての会話が印象的。特に後半、兄に向かって、家族には内緒で愛人への分灰を頼むシーンには涙が止まらない。泣かせよう、泣かせようという映画の思惑にまんまとはまり込んでいる自分を発見する。

   役所広司はいつもながら上手い。妻への感謝を言葉と共に表情で、目で、表している。頬も病状が進化するにつれこけて行く。身体もやせさらばえ弱弱しくなるように物理的にも役柄に成り切る。久しぶりの映画出演の今井美樹も、秘めた激情を隠して見舞いに来た愛人と応対する場面が良い。監督は「破線のマリス」「g」などのベテラン井坂聡。身近にある悲劇をしっかりと撮り上げている。

恵介
オススメ度: ★★★★☆
象の背中
2007年日本映画、松竹配給、2時間04分、2007年10月27日公開
監督:井坂聡
出演:役所広司 / 今井美樹 / 塩谷瞬
公式サイト:http://www.zo-nosenaka.jp/
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