「ヴィーナス」
老人の生臭い「セックスへの渇望」を表現した秀作

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   「俺の眼鏡は何処だ?」「右手に持っているだろう」「俺のは?」「首から下げてるじゃないか?」お年寄りにはお馴染みの会話が飛び交う老人主役のイギリス映画「ヴィーナス」。

(C)2006 Venus PicturesLtd/UK Film Council/Channel 4 Television  Corporation
(C)2006 Venus PicturesLtd/UK Film Council/Channel 4 Television  Corporation

   主役のピーター・オトゥールはこの作品で8度目のオスカー候補になった。今年75歳だが現役バリバリだ。演じるのは引退したも同然のモーリスという俳優の役。毎日昔の役者仲間と朝食を食べながらの会話が楽しい。特に仲の良いイアン(フィリップス)とは互いに悩み事を打ち明け合う。

   今日のイアンは嬉しそう。姪の娘ジェシーが田舎から出て来て彼と同居すると言う。看護婦の制服を着せて魚料理をさせるんだとルンルン。だがイアンの家を訪ねると、彼は酷い顔をしている。トンでもない娘が来た。魚料理はレンジに入れてチンすれば出来ると考えているし、看護婦どころか家事なんて何もしないし、出来ない。イアンは頭が痛いと寝込む始末だ。モーリスが部屋に入ると、トイレからカップラーメンを食べながら出て来るジェシー(J・ウィッテカー)。ジジイか、と馬鹿にした目つきで、ラーメンの次にはポテトチップスをバリバリ食べ、ビールをガブガブ飲む。美人ではないが若くてピチピチしている彼女を、しかしモーリスは「ヴィーナス」だと崇める。

   モーリスは、小遣い稼ぎのTV出演の現場や芝居見物にもジェシーを連れ廻す。何とかしてヴィーナスにタッチしたいが、老人は臭いから嫌、と拒否される。最初は手を握らせて貰い、イヤリングを買ってキスを肩に3回、でも涎を垂らしたらダメよ。裸が見られるかもしれない、と絵のモデルに紹介する。邪魔だと追い出され脚立を立てて覗き見するが、ドアにぶら下って画学生たちの前に転がり落ちる可笑しさったらない。TV局差し回しのリムジンで、ルーフを開けて街を眺める彼女の太ももを目の前にしたモーリスの嬉しそうな顔。入院したモーリスを見舞って、ジェシーが胸をたくし上げオッパイを見せてあげる。残念ながらモーリスが寝ているのにも笑える。

   ヴィーナスに邪険にされると、何故か別れた妻ヴァレリー(レッドグレーブ)が懐かしくなり、住まいを訪ねる。TVを見ていたヴァレリーがモーリスを呼ぶ。昔の彼の主演映画だ。「この相手役の女と同居して、6歳を頭に3人の子供たちと私を捨てたのよね」台所へ逃げ戻るモーリスの慌てよう。

   老人たちを自虐的に描きながら嫌味はないし、カラッとしていて爽快感がある。老人独特の前立腺症の悩みやTVで頻繁にオーダーが来る瀕死の老人役の嘆きなどをユーモラスに描きながら、生臭いセックスへの渇望を通して生(=性)への執着をテーマにした秀作だ。

恵介
オススメ度: ★★★★☆
ヴィーナス(VENUS)
2006年イギリス映画、ヘキサゴン・ピクチャーズ配給、1時間35分、2007年10月27日公開
監督:ロジャー・ミッシェル
出演:ピーター・オトゥール / レスリー・フィリップス / ヴァネッサ・レッドグレーブ
公式サイト:http://www.venus-cinema.com/
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