「アフター・ウェディング」
珍しいデンマーク映画は今年の「トップ3」に入る秀作

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   見たくて見たわけではないが、台風20号の豪雨の中、ふと入ったシネカノン有楽町1丁目で見終え、初日チェックのぴあの調査員に100点満点の映画だと答えた。珍しいデンマーク映画で、それも名も知らない女流監督、スサンネ・ピアの巧みな演出により、インドで孤児の慈善活動をする男のドラマにあっという間に引き込まれた。

(C)2006 Zentropa Entertainsments16 APS
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   インドで孤児院を営むヤコブ(マッツ・ミケルセン)は、ストリート・チルドレンに食べ物を配り、孤児院に戻れば子供たちの世話に没頭する真剣な慈善事業家だ。ヤコブのもとへ、故郷デンマークから巨額な資金のオファーがある。1ドルあれば10人分のワクチンが手に入る。喉から手が出るほど資金が必要なヤコブに、直接会って契約を結びたいという条件。久しぶりにコペンハーゲンに戻ったヤコブは、身分違いの豪華ホテルのスィートルームに通される。

   そして翌日会った実業家ヨルゲン(ロルフ・ラッセゴード)は、インドの実情を訴えるヴィデオ・プレゼンテーションには興味を示さない。明日、娘アナ(スティーネ・F・クリステンセン)の結婚式に出て欲しい、契約の話はその後でと言い残す。古城で開かれた式で、ヤコブは昔の恋人ヘレネ(シセ・バベット・クヌッセン)に出会い驚く。今はヨルゲンの妻だ。アナはヘレネの連れ子だと言う。もしや自分の娘ではと、ヤコブは思い始める。

   我がままで独善的な富豪のイメージだったヨルゲンの姿が変わって映るのは、その直ぐ後だ。ヘレネは金庫に隠されたモルヒネを見つける。ヤコブには自分の全財産を提供すると契約を変更するヨルゲン。この富豪は何を考えているのだろう。

   後半はヨルゲンの家族への思いやり、優しさ、愛情に触れ、涙涙で画面がにじむ。慈善家として金に屈しないというヤコブの毅然とした態度、家族への愛のためヤコブにしか頼めないヨルゲンの事情、2人の男の意地の張り合いがドラマを盛り上げる。韓国式の不治の病の薄っぺらな状況と違い、社会問題や会社組織、家族愛などを含めた大掛かりで荘厳な悲劇だ。

   ヤコブを演ずるM・ミケルセンは悪役(007/カジノ・ロワイヤル)が似合うが、頑固な慈善事業家と放埓な生活の過去を持つ男の姿を好演している。R・ラッセゴード扮するヨルゲンの2人の幼い息子の可愛がりようと、妻と義理の娘への思いやりと愛情には胸が打たれる。何よりもピア監督の、女性らしい細部に亘って計算し尽くされた演出の素晴らしさ。主人公たちの心象風景を、花や植物のフラッシュの挿入で表現するのも適切で見事だ。この作品は今年のトップ3に数えて良い。

恵介
アフター・ウェディング(AFTER THE WEDDING)
2006年デンマーク映画、シネカノン配給、1時間59分
監督:スサンネ・ピア
出演:マッツ・ミケルセン / ロルフ・ラッセゴード / シセ・バベット・クネッセン
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