2024年 3月 28日 (木)

遠藤憲一「屈折した」役カッコイイ 時代劇も「なかなか」(風の果て)

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   「地味だけどキラッと光る」ドラマってこういうのね。夜8時台の時代劇というと「水戸黄門」のイメージが強くて、あんまり見る気がしなかった。だけど、このNHKの「木曜時代劇シリーズ」にはちょっと注目してた。時々「時代劇もなかなかいいな」と思えるようなのをやるからだ。

   原作は藤沢周平。小説も人気が高く、藤沢ワールドには固定ファンがいるみたいね。藤沢ワールドといえば、舞台はいつものように庄内地方のある小藩。

   53歳になる執政職の桑山又左衛門(佐藤浩市)は若き日を振り返る。後に又左衛門となる隼太(福士誠治)は、他の4人の若者と一緒に道場に通っている。稽古帰りに憧れのマドンナ、千加の家に寄り込んでお茶をご馳走になるのが唯一の楽しみだ。口実は千加の父親から講話を聞くということだが、もちろんみんな、家の石高も高く美人の千加の婿になることを狙っているのだ。

   一見、屈託なく青春してるようだが、悩みはけっこう深い。というのも、1000石取りの長男である杉山鹿之助(斉藤工・後に仲村トオル)の他はみんな次男以下。お婿に行けなければ結婚も出来ず、一生兄の厄介者で暮らさなければならないからだ。

   庶民なら手に職をつけるため奉公に出され、いずれ独立した職人や商人になる道もあったのだろうが、なまじ武士だとかえって大変だったのね。昔は子どもがよく死んだから、次男以下の男の子はスペアだったのよ。長男が無事成人して家督を継いでしまえばあとは用無し、これはシビアだ。

   だから、剣術や学問に精を出し、良い婿入りの口がかかってくるのをひたすら待つ。いやー、これは心細いだろうなあ。私たちのおばあちゃんが、お茶やお花のお稽古をしながらお見合い話を待っていたのと同じだもの。

   マドンナはやはり、エリートの鹿之助と結婚、あとの4人は改めてガックリを噛みしめ、それぞれの道を受け入れてゆく。生家よりさらに貧乏な家の婿となり内職に明け暮れる者、年上の寡婦の3人目の婿となる者……。隼太も桑山孫助(蟹江敬三)に見込まれ、ブスだと評判の桑山の娘、満江(安藤サクラ・後に石田えり)の婿になる。

   こうして、若者たちはそれぞれの現実を背負って年を重ねてゆく。小藩のことゆえ、彼らの人生は交錯し、時に苛烈に敵対せざるをえない。今週の最終回では、又左衛門と野瀬市之丞(遠藤憲一)が果たし合いをするはず。遠藤憲一は、本当は優しいくせに屈折しているという彼の定番の役。凄味のある暗い魅力を存分に発揮していてカッコいいぞ。佐藤浩市との対決は見逃せない。録画予約しとこうっと。

                                

   ※木曜時代劇 風の果て(NHK 木曜・20時)

文   カモノ・ハシ
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