「説明不足」の背後にある新医療制度の問題点

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   4月1日からスタートした新しい医療制度の医療費負担増に、75歳以上の人たちが戸惑っている。なにしろ説明不足。「生活はどうなる?」という不安がいっぱいだ。

   新医療制度について、国はこれまで「大半の人の保険料は下がる」と説明してきた。ところが実際は大違い。

・ ケース1 夫73歳、妻76歳。これまで夫婦の保険料は年17万7000円だったが、75歳超の妻が別になって4万7000円増。夫は減額になるが、差し引き1万7000円の負担増になる。また、夫は来年から窓口負担が1割から2割になる(70-74歳)ため、持病治療に払っている年10万円が20万円になる。
・ ケース2 一人暮らしの75歳。これまでは息子の扶養家族だったので、負担はゼロだったが、今後は年1万4000円が年金から引かれる。年金は月額6万5000円 。医者にかかる回数を減らすことになりそうだという。

現役世代にも影響

   制度はまた、保険料を2年ごとに見直すとしている。医療費の伸びの1割を高齢者が負担するから、医療費が伸びれば保険料はあがる。2006年の医療費は33兆円、2025年には56兆円になるという試算がある。その53%が高齢者だという。

   影響は若い世代にも及ぶ。75歳以上の医療費は、5割を公費、1割を高齢者が、残りの4割を現役世代(若年層)の保険からの支援金で賄う。高齢化が進めばこの負担がさらに増え、しかも自分たちが高齢者になったときに大丈夫なのか、という不安が当然ある。

   駒村康平・慶應大学教授は「20年ぶりの大改革だったのだが、効果、意義を含めて説明が不足している」という。また、低所得者層への配慮という点で「04年の年金、05年の介護、06年の医療と改革全体のなかで、年金の手取りがどれくらい残るかが示されていない」と。

「1日も早くベッドを空けろと…」

   新制度の眼目である医療費の削減の重点は2つ。「外来医療費」と「療養病床」だ。具体的には、定額医療とベッドの縮小--病院経営を医療費の面から削っていく。医師たちも「そこまで減らしていいのか」と悩む。

   長期療養の夫をかかえる妻の言葉が胸に痛い。「1日でも生きてほしいが、病院は1日も早くベッドを空けろという。最後くらい安心して横にさせたい」

   国谷裕子は「このままでは、低い安心しかえられない。根本的議論を」と締めくくった。が、高齢化も医療費の先行きもとうの昔にわかっていたこと。足りないから削る「引き算」しかできない厚労省のお粗末に、きっちりと切り込むべきだろう。

ヤンヤン

<メモ:新しい高齢者医療制度>後期高齢者医療制度。「後期高齢者」という名称が不評で、「長寿医療制度」と通称を変えるなど混乱が見られた。75歳以上を独立した保険に移し、医療給付費の1割を保険料として年金から差し引くというもの。ねらいは急増する医療費の削減と財源の確保で、これで医療費8兆円を削減できるという。

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