中国、「不満」取材を制限 大地震が浮き彫りにしたもの

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   中国・四川大地震から1か月になる。復興は遅々として進まず、被災者は明日が見えない状態が続いている。そんななか見えてきたのが、格差の拡大だ。

   この25年間で、中国の農村部と都市部の格差は3倍になったとされる。それを象徴するのが出稼ぎだ。死者1万2000人を出した四川省綿竹市の若い夫婦をカメラが追った。夫婦は地震で1人娘(11)を亡くしたが、地震のとき2人は沿海部の都市に出稼ぎに出ていたのだった。

   「娘には農村の生活を味あわせたくなかった」と夫はいう。妻は繊維工場で日に12時間働き、月に3万円を得ていた。地元では得られない額だ。すべて、娘を大学へやるためだったというが、家を出たのは、娘が5歳のときだった。悔恨が、いまも2人をさいなむ。

豊かな地方が被災地支援

   興梠(こうろぎ)一郎・神田外語大学教授は、「制度的な矛盾が、地震で見えてきてしまった」という。山間部に産業はない。一方で臨海部では人手が必要だが、地方政府も中央政府も、このあたりは成り行きまかせだった。

   中央政府は、被災者を食べさせるのが精一杯の被災地の地方政府の現状に、思い切った策を打ち出した。豊かな臨海部の21の省など地方当局に、被災地の復興を請け負わせたのである。広東省は震源地のぶん川県、山東省は北川県、江蘇省は綿竹市といった組み合わせで、生活物資の支給、仮設住宅の設置からインフラ補修、経済の再生までを手がけるのだという。

   江蘇省はすでに5000人の作業員を派遣して、仮設住宅の建設に着手。倒壊の危険がある住宅の判定なども行っているが、家屋の建て直しとなると、その費用をどうするかが見えない。あまりにも被害が大きすぎて、手探り状態なのだ。

充分ではない連携

   綿陽市から佐藤文隆記者は、「連携は充分でない。援助する省は中央から課せられたノルマの達成に懸命で、現地と将来について充分な話もできないでいる」と現状を伝えた。

   国谷裕子は、「被災者には、先が見えない不満があると思うが」と聞いたが、佐藤記者は、「住民は、地方当局が充分に努力していないと感じている。中国政府はこの不満が中央へ向くのが恐い。国営テレビは被災者の不満を一切伝えておらず、われわれも学校や遺族への取材を妨害されるようになった」という。

   興梠教授も、情報管理には首を傾げたが、地方政府の助け合いについては、「地方同士なのできめ細かくできる。支援物資の分配がきちんとできるだろう」と期待する。

   たしかに、富めるものが貧しいものを支援するというのは、あまり聞いたことがない。沿海部の発展は貧しい内陸部に支えられているのだから、という視点も新しい。というより、あまり中国的ではない。地震が中国を変えることになるのだろうか。興味ある実験かもしれない。

                                        

ヤンヤン

  

<メモ:中国の出稼ぎ>
いま中国経済の3、4割は出稼ぎが支えているといわれる。しかし、中国では戸籍が、都市と農村では別になっているため、移住はしにくい。もし子どもを連れていっても、教育など社会的な保護を受けられないことになる。それと所得の格差が、家族離ればなれの出稼ぎが多い理由だ。

* NHKクローズアップ現代(2008年6月11日放送)

文   ヤンヤン
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