「消える」海のえさ場 打つ手は…

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   静岡県は御前崎の海底に記者が潜ってみたという。カメラが捉えた映像ときたら、ゴツゴツとした岩がちで、間違っても休日に水中散歩したくなるような所ではない。

   じつは、そこにかつて日本最大級、8000ヘクタールの堂々たる藻場が広がっていた。しかし、10年ほどの間にまるごと消失したのだそうだ。「大変なことだと思いましたよ」と県の水産技術研究所所長。

温暖化の影響に注目

   「海の中のことなので、普通の人はなかなか注目しないんですけど」と、所長はまるでこちらを見透かしたように付け加える。たしかに80km四方の森林が禿げ山になれば一目瞭然だろうが、藻場自体をよく見たことがない筆者などには、あまり実感がない話だ。在りし日の元気な藻場の写真や映像を見せられても、それはゆらゆらと気味が悪く、殺風景な岩場と見た目的には良い勝負である。

   そうは言っても、これは漁業や私たちの食卓に関する大問題――。事実、日本の藻場は1998年までの20年間に30%減少。藻場がらみの漁獲量も同じ時期に40%減っている。しかも、藻場には「地上の森林より高い二酸化炭素の固定能力がある」と、この日ゲストの藻場研究の専門家、谷口和也東北大学教授は言う。温暖化防止にも役立っているのだ。

   そんな藻場が急速に消えてるのはなぜか。海の埋め立てや海洋汚染に加えて、海水温の上昇、つまり地球温暖化の影響が注目されているという。海面が温かくなると、藻の栄養になる窒素やリンを含んだ海洋深層水が上に上がってこない。で、ただでさえ栄養不足なところに、アイゴなどの南方系の魚は水温が上がると活発に動き、食欲旺盛。エサの藻を食べる量が増すという。ウニが異常に増えている所もあり、これらが藻を食い尽くしている。なお、残念なことに異常発生したウニは身が薄くて、食べられないそうである。

   この問題への取り組みは様々行われているそうだ。海藻を植えたり、アイゴなどの害魚を捕獲したりする。あるいは、藻の周りに音を流して撃退。さらには、窒素やリンを含んだ水を直接、海に流すなど。

   聞いていると、魚の養殖か、農業といった趣である。人間が海藻を植え、栄養を与えて、害虫(魚)を駆除し、魚介類を「収獲」する。「天然」の海の恵みを得るために、人の手が海に入るという時代になっていきそうだ。

ボンド柳生

※NHKクローズアップ現代(2008年7月1日放送)

   <メモ:藻場(もば)>

   水深数メートル程度の浅い海底に、ホンダワラ、アマモ、コンブ、アラメ、カジメなどの海草・海藻が密生している場所。アワビやサザエ、エビといった魚介類が豊富に生息、アジ、タイ、カレイが産卵するなど、「海のゆりかご」とも呼ばれる。

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