EU大丈夫なのか 「小国の反乱」のインパクト

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   グローバル化に対応できるさらなる拡大と統合を模索するEU。新たな条約を2009年1月までに批准し、発効する予定になっていた。しかし、EU全体のわずか1%に満たない人口(430万人)の小国・アイルランドの反乱で大揺れに揺れている。

   だからといってEU が「分裂への序章」を歩み始めたわけではない。番組に出演した慶応大学大学院の庄司克宏教授は「今は危機、ターニングポイントだが、成功モデルに変えるチャンスでもある」と、前向きにとらえている。

アイルランドが「否決」

   EUの新しい条約とは「リスボン条約」。アイルランドが08年6月12日の国民投票で、この条約の批准を否決したのだ。

   安い法人税を武器に外資導入策を推進し、1990年代後半から2000年まで年率10%の高度成長を遂げ、それ以降も年率5%の成長を続けている アイルランド。EUの優等生と言われてきた。そのアイルランドがなぜ条約に拒否を?

   番組によると、最大の理由はフランスやドイツなどの大国のなかで、小国である自国が埋没してしまう恐怖。

   2つ目は、安全保障面で伝統的に中立主義の立場をとってきたアイルランドが、EUの軍事作戦に組み込まれることへの不安だ。

   3つ目は、リスボン条約の中身そのものが難しくてよく分らないことも、反対派が増えた理由になっている。

「新たなコンセンサス必要」

   EU議長国のサルコジ仏大統領は「当面、アイルランド以外で批准を進めるべきだ」とテレビで述べる一方、アイルランドには「来春までに再び国民投票を実施し、条約批准する」よう強く迫った。

   こうした大国の高姿勢に小国チェコとポーランドは「国家に批准を強いることはできないし、する気もない」と猛反発した。

   NHKの長崎泰裕ヨーロッパ総局長によると、サルコジ大統領は今月7月21日にはアイルランドを訪問予定。「否決に至った分析を聞いた上で、10月~12月の間に解決策を提案したい」と述べているという。

   大国主導に対する小国の反乱。国谷キャスターは「世界をリードする土台として絶対欠かせないEU内の結束に揺れが出てきたのでしょうか」と疑問をぶつける。

   これに庄司教授は「EUが何をすべきかについて新たなコンセンサスが必要だと思う。グローバル化に対応できる力を持つには1つしかない。競争と弱者保護という問題に対応できる『ヨーロッパ社会モデル』をEU市民に提案すること」だと。

   かつて米、欧と並ぶアジアの中核として、日本が「世界の3極」を担う夢を見たこともあったが、EUのダイナミックな動きをみると、日本は、見果てぬ夢のままか???

モンブラン

<リスボン条約>「欧州憲法条約」の批准が、3年前2005年に仏とオランダにおける国民投票で否決されたことから、修正のうえできた条約。欧州憲法条約で実施される予定であった機構改革などが含まれており、EU大統領を設置することになっている。

*NHKクローズアップ現代(2008年7月14日放送)

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