2024年 4月 25日 (木)

「失恋休暇」で若者生かせ 成果主義の「破たん」

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   かつて、コスト削減で企業が真っ先に切ったのが、文化事業と福利厚生だった。一方で成果重視は社員のストレスを増し離職率を高める――いわば企業の足腰に当たる部分で、いま見直しが始まっているという。主役は若い人たちだ。

バーゲン休暇も

   夏のバーゲン真っ盛りの銀座で、平日の午前中ゆったりと買い物をする若い女性。彼女は「バーゲン休暇」中だった。夏冬各1回、半日の休暇がとれるのだ。で、そのまま会社へ出て買い物を仲間に披露してわいわい。

   5年前にできた市場調査会社。社員6人で社長以下大半が女性だ。ここにはまた、「失恋休暇」なんてのもある。25歳までは1日、30歳までは2日、30歳以上は3日。まだだれもとったことがないそうだが……。

   製薬会社の営業マン。給料の半分が出来高払いというきびしい環境だが、そのプレッシャーから解放してくれるのが2匹の愛犬だ。彼の会社では昨年から、ペットを飼っている社員に一律1000円のペット扶養手当が出る。「会社が認めてくれたのが嬉しい」

   この会社は、この10年で売り上げを倍近くに伸ばしているが、ストレスも多い。アンケートしたら、社員の4割がペットを飼っているとわかって、制度化した。「1000円以上の価値がある。社員のモチベーションの向上になっている」と役員はいう。

   首都圏のレストラングループでは、インセンティブポイントという「ポイント制」を採っている。毎月一律400ポイントのほかに、成績優良者にいろいろポイントが出る。ポイントは家電製品などから13000で沖縄リゾートホテル、40000でイタリア旅行など。

   この業界は引き抜きなど出入りの多いのが悩み。そこで、給料ではなく福利厚生面で、と出たアイデア。かかった費用は全人件費の0.18%だったが、辞める人の割合が半分に減ったという。6月の月間MVPを獲得した調理担当は、「麻布のイタリアンのディナー券をもらって勉強してきたい」

社内クラブ活動で離職率減

   国谷裕子が、「若い人はドライといわれるが、ポイントを素直に喜んでましたね」

   情報誌の藤井大輔編集長は、「ドライの裏返しで、給料よりも自分が大切にされている、認められるとわかると、やる気に火がつく。給与よりも働き心地、というのはある」

   一方で、若い世代のアイデアで、社員旅行で一体感を生み出したり、クラブ活動で会社の空気を変えたりしてしまった例もある。

   文京区のパソコンソフト会社の昼休み。10人以上もの大勢でパソコンゲーム。これがクラブ活動だ。5人集まればどんなクラブでも1人年間1万円が出る。野球、ダーツ、フットサル、そうじ(町の清掃)などいま12ある。

   ITブームで急成長し、いま社員200人、年商120億円。成果主義の行き過ぎで、社員同士はライバル、年収にも格差が生まれて、離職率は3割に達していた。

   3年前にトップが代わって、「雰囲気を変える」と始めたのがクラブ活動だった。昨年からは人事考課も成果主義から年功重視の選択が可能になった。「人が出ていくのは、せっかくのノウハウが抜けること。だから従業員を大事にする。伸びる会社は従業員が生き生きがんばってる会社--すごい単純な結果がこれから出てくる」(青野慶久社長)

   藤井さんは、若い世代について「画一的なことはいやでも、深いコミュニケーションや本質的な会話はしたい。共同体意識みたいなものをほしがっているのでは」という。

   若い世代もいいじゃないか。前の世代がぶちこわしてしまった社会とシステムを、建て直すかもしれない――そんな気がしてきた。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2008年7月16日放送)

文   ヤンヤン
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