草なぎクンと「東京の女」のもどかしさ(山のあなた 徳市の恋)
(C)2008 フジテレビ・J-dream・東北新社・東宝
<山のあなた 徳市の恋>清水宏監督の「按摩と女」を「茶の味」「鮫肌男と桃尻女」など斬新で独自の世界観を描いてきたことで知られる石井克人監督がリメイクした「山のあなた 徳市の恋」。
本作は清水宏監督の脚本、カメラの構図はまったく一緒の完全リメイク作品である。当時、モノクロであった映像はカラーで蘇り、新緑の木々や水の澄み切った川、そして舞台となる山奥の温泉宿がある町の風景などの映像は美しく観ているだけで癒される。
また、徳市役の草なぎ剛や東京から来た女を演じるマイコ、福一役の加瀬亮などキャストも皆ハマり役だ。徳市の按摩仲間の福一たちとのコミカルなやり取り、温泉宿での出来事など人と人とのドラマもなかなか良く描かれており、笑えて、そしてどこか懐かしく心がほっこりするような人間ドラマも見ものである。
だが、1番焦点を置くべき東京の女との関わりをもう少し描いてほしかった。完全リメイク作品を作り上げるのは確かに面白い試みなのだが、モノクロだからこそ出る味わいのようなものがあったのも事実であり、カラーになったことで、どこか真新しい落ち着きのなさのようなものを感じてしまった。だからこそ、石井監督が徳市と東京の女とのドラマを描いても良かったのではないだろうか。
しかし、物足りなさはあるが完全リメイク作品としてはなかなか良く出来ていたのではないだろうか。映像や音楽、人間模様の細部まで和の心があり、のほほんとした気持ちになれる癒し映画であった。
ジャナ専 jj_nakamura
オススメ度:☆☆☆