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資源高が招く「悪循環」日本経済は大ピンチに!?

   約1ヶ月間に渡って、お休みしていたクローズアップ現代が8月26日の放送から帰ってきた。通常の30分間枠を1時間スペシャルにパワーアップ。タイトルからして「"グローバル・インフレ"の衝撃 ~転換する世界経済 日本は~」と重厚長大である。

「いろんな状況が悪化して、非常に苦しくなる」

   日本をはじめ、米国、スペイン、中国、オーストラリア等、海外の映像を贅沢にちりばめ、詰め込んで、"資源高"による「パラダイムシフト、時代の転換が起きている」(榊原英資・早稲田大学教授)現状を描き出す。休止中に放送されていた北京五輪のお祭り騒ぎ、浮かれ気分を一気に払拭しようと努めたようだ。

   石油をはじめ、金属に食料――多くの原材料・資源が世界的に高騰しているが、これは一時的な投機現象ではなく「持続的に上昇が続く」(水野和夫・三菱UFJ証券チーフエコノミスト)見込みである。

   資源小国で、製造・輸出大国の日本はとりわけ大ピンチだ。これまで日本企業は原材料を低価格で仕入れてきたが、新興国の需要拡大で仕入れ値が高騰。かといって、製品の輸出は人件費の安い新興国との価格競争に晒され、頼みの輸出先であるアメリカはサブプライムローン発の不動産不況、金融危機で消費低迷の懸念大。

   国内では、消費者の買い控えを恐れて、価格転嫁もなかなか容易にできない。すると、企業は人件費をさらに節約して、ますます購買力が下がる悪循環。"ミスター円"と呼ばれた元大蔵官僚は「この悪循環ははじまったばかり。この夏以降、いろんな状況が悪化して、非常に苦しくなる」と脅しをかける。

資源小国ニッポンに打開策はあるのか?

   こうした"病状"の説明を延々と1時間近くも聞かされて、ようやくお待ちかねの"クスリ"のお時間だ。問題には対策、課題には取り組みが必要だ。時間的には簡潔だったが、グローバル資源高時代に対する「日本企業の模索」が紹介される。製造工程を見直して、原料を節約したり、代替の材料を試したり、資源確保に乗り出したり。「こうした取り組みを見ると勇気づけられますね」と国谷裕子キャスター。

   「そうですね」と相槌を打ちながらも、「(このパラダイムシフトには)企業の努力だけでは限界があり、公的政策が必要だ」と榊原教授は言う。たとえば公がカネを出し、官民一体となって資源確保を進め、一方では21世紀の成長産業であるエネルギー・農業分野に注力する。為替政策では資源を買いやすい円高を主導する。

   こうした対策を取らなければ「日本の将来はちょっと厳しい」のである。番組を通しての印象では、とても「ちょっと」どころではなさそうである。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2008年8月26日放送)