2024年 4月 19日 (金)

パラリンピック見る目が変わる 義足アスリートのすごい挑戦

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   南アフリカのオスカー・ピストリウス(21)は、ひざから下がない。病気のため生後11か月で切断した。しかし、義足のままアウトドアスポーツやダイビングに挑戦し続け、17歳のとき、競技用の義足に出会って、スプリンターになった。はがねの義足が刃のように見えるところから、「ブレード・ランナー」と呼ばれる。

「健常者と競えるとはすばらしい」

   その年のアテネ・パラリンピックの200メートルで世界記録を出して金メダル。そこから健常者と走りたいと思い定めて昨2007年7月、ローマでの競技会で実現させた。400メートルで、スタートでは出遅れたものの、最後の直線100メートルでなんと6人をごぼう抜きして2位に入った。

   世界中が驚いた。が、同時に「バネなど人工的な力を使った機器の使用」を禁じた競技規則に触れるのではないかという疑義が出た。ドイツの研究者の調査をもとに(末尾にメモ)、国際陸連は、「国際大会への出場は認められない」と決定した。オスカーは異議を申し立て、アメリカの研究者の調査をもとに、スイスのスポーツ仲裁裁判所の裁定にかけた。

   そして今年2月、裁判所は、「人工的な力とはいいきれない」として、オスカーの競技出場を認めたのだった。オスカーは北京五輪を目指して7月の国際大会に挑んだが、参加標準記録に0.3秒及ばず3位に終わった。

   オスカーは、「スポーツは人を区別するものではなく、つなげるものなんです」といっている。むろん、9月6日からの北京パラリンピックでは記録を目指す。

   障害者アスリートのレベルアップはめざましい。補助具の高性能化やトレーニング方法の進歩が支えているのだが、その結果、健常者との垣根が一層低くなってきているという。

   ゲストは、シドニーの車椅子バスケットの全日本総監督だった高橋明。

   「障害者のスポーツは、リハビリの成果を競うものとして始まったのだが、健常者と競えるとはすばらしい」という。

   また、義足の進歩では、「走り幅跳びで健足で踏み切って4メートル60だった選手が、義足で踏み切ったら1メートル30も伸びたというのがあります。推進力のある補助具ですね」という。

車いすバスケ大学選手権 9割は健常者

   しかし、陸連の疑念とは別に、こうした進歩は身障者スポーツの未来を開くものになっている。例として、ヨーロッパでの車いすバスケット選手権が紹介された。車いすの激しいぶつかり合いが、観客を熱狂させている。それはもう、バスケットとは別物だ。

   イタリアでは、プロリーグがあって、選手300人、年収1000万円クラスもいるという。スポンサーシップによる運営だが、スポンサーになった企業の業績があがったとかで、スカウトまでがいた。驚いたことに、日本人選手が1人いた。

   アテネの代表だった安直樹(30)で、昨シーズンから2部リーグに在籍。「いつか日本でもプロチームを作りたい」といっていた。

   もっと重要なのは、こうした動きが、健常者と身障者の垣根をも越えつつあることだ。

   高橋は「身障者スポーツは特別なものだと思ってきた。そうではなくて、ルールを工夫することで、体格、体力、年齢、性別などを超えて一緒に楽しめるもの。身障者のためのではなくて、一緒に楽しめるようになる」という。

   いま、大学では車いすバスケの選手権があるそうだ。9割が健常者だという。知らないところで、静かに変化が進んでいる。パラリンピックを見る目も変えた方がいい。オスカーの決勝は16日だそうだ。

                                        

ヤンヤン

   <メモ:オスカー・ピストリウスの挑戦>

ドイツの研究者は、直線のトップスピードでのオスカーは、「健常者より効率的に力を使っている」と指摘した。健常者の場合は足首で力が吸収され、蹴る力の60%が推進力になるが、足首のないオスカーは90%にもなるというのだ。「ひざや股関節の動きも少なくて有利」とも。 オスカーは、「直線だけでなく、競技全体で判断してほしい」と訴えた。ふくらはぎがないために、スタートでの加速が弱く、また足首で踏ん張れないためにカーブでもスピードは出せないからだ。  アメリカの研究者はレース全体のエネルギーを計測。「記録は、オスカーさんのひざから上の身体能力の結果で、義足によるものではない」と判断した。  これについて高橋明は「距離が長くなると記録が健常者に近くなる。ふくらはぎがないために乳酸がたまらないのではないか。このあたりが課題でしょうね」という。

   *NHKクローズアップ現代(2008年9月3日放送)

文   ヤンヤン
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