「危機感欠如」は役所の体質? 厚労省と器具使い回し

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衝撃的な事件が次々と起こり、忘れてはいけない出来事が記憶の彼方に消えてしまうことが少なくない。採血用器具の使い回しもその1つであろう。正確には「採血用穿刺(せんし)器具」というそうだ。

「危ないとは思ってなかった」

   全国に250万人といわれる糖尿病患者が自らの血糖値を測定するため、指先に針を刺して採血する器具だ。本来、家庭内での個人使用に限定されていたにも拘わらず、医療機関で複数の患者に使い回されていたのである。

   番組は、今年(2008年)5月、初めて使い回しが発覚した島根県の診療所などいくつかの医療機関が頭を下げる様子を映す。そして、1万1755か所の医療機関で使い回しが行われていた(厚生労働省調べ)と教えてくれる。どうして多くの医療機関で使い回しがあったのか。

   山形県の町立最上病院の看護師は「危ないとは思ってなかった。短時間で測定できて便利だし、患者さんに苦痛もないから」と話す。使った針は廃棄処分し、新しいのと交換していたらしいが、針をカバーするキャップに血液が付き、そこから肝炎に感染して生命にかかわる恐れもある。幸いにして日本では感染報告がまだないが、イギリスでは死者2名が出ている。イギリスの事例を受けて厚労省は2年前、都道府県のほか、医師会など24の団体に使い回し禁止を通告した。が、それでも危険な使い回しは止まず、8585か所の医療機関で続けられた。なぜ、そうした結果を招いたのか、が今夜(9月25日)の眼目の一つ。

現場に伝わらない注意喚起

   厚労省の通告の仕方に深刻さを伝える緊迫感が欠けていたのが要因だ。「感染事例は国内では未だ報告されていない……今回の注意喚起は予防的措置である」。31の府県は全く周知せず、16の都道府県でも一部の医療現場にしか伝えていなかった。医師会もホームページや会報に掲載したくらい。伝達機能が働いていなかったといえる。厚労省も「重く受け止めて行かなければいけない」と認識の甘さを認める。

   タミフルのように副作用や死亡事故が出た場合(国内限定?)は、メーカー(採血用穿刺器具は15メーカー)に直接指示して医療機関へ使用方法などを徹底指導するよう求めるという。今回はそうでないと判断したのだろう。汚染米のケースでも窺われるが、お役所というところは、波風を立てたくないのか消極的にしか動かず、後でそのツケを払わされることが多い。体質なのか。

   「問題の本質と再発防止策」を国谷裕子キャスターに尋ねられたスタジオゲストの古幡博・東京慈恵会医科大学教授は「出されたリスク情報がデータに止まって、天気予報の注意報や警報のように情報化されていなかった」とし、「情報の伝達ルートについては、フィードバックとか、チェックし、監視する機能を持たせなければならない。国、地方自治体、病院、メーカーの4者が協議して確実なルートを用意する必要がある」と語った。

   採血用穿刺器具の価格、消費された量などを知りたかった。めずらしく、内容的にいま一つかゆい所に手が届いていない気がした。

アレマ

   * NHKクローズアップ現代(2008年9月25日放送)

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