「法律」は再発防止に有効か 大阪・ビデオ店火災

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   15人の命を奪った大阪・ミナミの個室ビデオ店火災は放火によることが判明したが、多数の死者が出た原因は、店の構造がもたらした激しい煙と有毒ガスだったと番組は訴える。

   消防庁の研究企画部長に番組が依頼してつくってもらったシミュレーションでは、煙が発生してから20秒で通路へ広がり、40秒後、店の奥で濃い煙が充満し、1分で店内全体が黒く覆われて行く様子が示される。店の出口は1か所しかなく、通路は1メートルほどの狭さ。犠牲者のうち「通路で見つかった4名は避難の途中で倒れ……多くは眠ったまま煙を吸い込んだと見られ、11人は個室の中で遺体で見つかった」(ナレーション)。「ほとんどが一酸化炭素中毒で亡くなった」(国谷裕子キャスター)という。

「安全よりも利益が優先」

   「どうすれば惨事を防げるのでしょう」(国谷キャスター)の問いかけに、スタジオゲストの関沢愛・東大教授は、各個室へのスプリンクラー設置と、2方向避難、つまり両方向の出口が有効、と答える。が、取材にあたった記者が言うには、今回の個室ビデオ店は、ビルの1階だったこともあって、2つとも義務付けられていなかったらしい。身勝手な46才の男と同宿したこと、防火設備に恵まれなかったこと、二重の意味で、被害者たちは不運だったというしかない。

   「安全よりも利益が優先する」(国谷キャスター)、こうした個室ビデオ店が都市の繁華街に急増中であることを、番組後半で伝える。「終電を逃がしたときは、便利」と利用者。宿泊客の大半はサラリーマンのようだ。「ライバルはホテル」の看板が目につく。カプセルホテルより安い料金が売りなのだ。

   番組は、個室ビデオ店の開業支援業者なる人物を登場させる。彼の話では、不動産業者や建設業者からの、サイドビジネスにしたいとの相談があとをたたないという。「短期間に2店舗、3店舗と増やして行く」(支援業者)とのこと。「確実に利益を上げるためには狭いスペースにできるだけ多くの個室を設けることがポイント」(ナレーション)。「消防法に関しては相談を受けることは、まずない」(支援業者)。「安全よりも利益優先」の精神である。

利用実態の変化に追いつかない

   なんらかの規制が求められるのでは、と思うが、容易ではなさそう。「実は、個室ビデオ店の実態はよくわかっていない」と語るのは社会部記者で、「店に、成人向けのビデオ、DVDが多い場合、風俗営業法上、都道府県の公安委員会の許可が必要だが、届けを出すところは少ない。したがって、どれだけあるか公安委員会もつかんでいない」と続ける。

   いずれも死者を出した新宿歌舞伎町ビルや宝塚市のカラオケボックス火災では、その都度、法律を改正して規制を強化してきたが、法の目をかいくぐるように、個室ビデオ店がホテル代わりに使われて、またも惨事が繰り返された。「利用実態の変化に法律が追いついていない」(社会部記者)。

   関沢教授は「個別の建物の具体的な危険実態に従って、消防が迅速に指導改善できる権限、体制の充実があってもいいのではないか」と提言する。とはいっても、おいそれと手当てはできないだろう。相当な注意を払って宿泊するほうが身のためのようだ。

アレマ

NHKクローズアップ現代(2008年10月2日放送)

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