「死因見過ごし」が生む恐怖 日本のお粗末な実態
<テレビウォッチ>「今夜は、亡くなった原因が分からない人の死因究明が、おろそかにされている実態です」と、国谷キャスターが『死因不明社会・ニッポン』に潜む危険性に迫った。
背景には、検視制度の不備がある。生ある者必ず死を迎える。だからといって死因を特定せずに見過ごしたままでは「安全・安心な社会」とは言えないことを提起した好番組だった。
届出は月間15万件
今(2008)年8月、都内に住む71歳の女性が亡くなり、警察の検視によって病死と判断された。しかし、火葬の直前、女性の頭部に外傷があることが判明し、捜査のやり直しが求められた。
昨年、北海道・北見市で起きたガス漏れによる死者3人、重軽傷者11人の事故は、前日に一酸化炭素中毒で死亡していた被害者を警察が病死と判断したため、被害が広がった。
死亡原因が分からないとして警察に届けられる件数は、月間15万人に及ぶが、こうした検視の際の間違いが意外に多いのに驚く。
その死因を調べる検査体制は、まず地元の医師の立ち合いで、犯罪の「可能性アリ」と「可能性ナシ」に振り分けられ、犯罪の「可能性アリ」と判断された遺体が司法解剖に回される。
まず問題は、法医学の専門知識を持たない地元の開業医が立ち会う検視。首を絞められた跡や殴られた跡があるのはいいが、外見では分かりにくい場合は「難しくて判断に迷うことがしばしばある」という。
ある開業医が1か月間に検視で判断したリストを見ると、死因不明で亡くなった25人中21人を「心不全」と書きいれていた。これでは死因を特定したことにならない。