人工心臓の仕事と「チアリーダー」理論

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   今回のプロフェッショナルは、本当にかっこいいと思える女性だった。名前は野尻知里。医療メーカー・テルモの中の人工心臓を制作する会社のリーダーで、元々は外科医。新しいタイプの人工心臓「デュラハート」を制作し、注目を集めている。

   人工心臓は弱った心臓の代わりにフィンを回し、血液を体内に送り出す機械。今までは、フィンをモーターの軸に取り付け回していた。しかし可動する軸があると摩耗してくる。摩耗した部分がひずみとなり、それが血流にも影響を与え、血栓が生じる。野尻の開発した人工心臓では磁力を使用しフィンを回す。リニアモーターカーのようにフィンが浮き、回転する。軸がないため摩耗も起こらない。

   かっこいいという基準は人それぞれで、時と場合によっても違う。物事に取り組む姿勢がかっこいい場合もあるし、考え方がかっこいい場合もある。もちろん見た目でかっこいいと感じることもある。私が野尻をかっこいいと感じたのは(具体的に分析できなかったのが恥ずかしいが)彼女の人柄だ。

   彼女の仕事に対する流儀は『チアリーダーになりきる』こと。会社の朝礼では従業員に朝食を出すようにして、自分は会場の設営を手伝う。常に明るく振る舞い、逆境にたったときはとことん泣く。泣くとすっきりし、次への希望が湧くという。「苦しいことがあったとき、それをスプリングボード(飛び板)にする。逆境にたつと強くなる、妙に強くなるんですよ」。

   医療をメカニックな部分で支え、それをビジネスとして成立させなければいけない。様々な分野に精通していないとできない仕事だ。人以上の動機や意欲が必要だろう。だが彼女から感じるのは激しい才能を、ふんわりしたもので包んだような存在感。仕事のできる人間は世の中にたくさんいる。そういう人にトゲトゲした人が多い気がするのは気のせいだろうか。野尻のような人に、私はなりたい。

慶応大学 がくちゃん

   *NHKプロフェッショナル 仕事の流儀(2008年10月28日放送)

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