「締め切り」とスクープの関係 今週生きのイイ「石井慧ネタ」は…

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   今週は締め切りについて書いてみたい。ここで取り扱っている5誌の発売は、現代、ポストが月曜日、朝日は火曜日だが、なぜか、月曜日の昼にはキオスクに並んでいる。新潮、文春は木曜日。

   出版社は印刷所を自分のところでもたないから、校了(締め切り)は、印刷、製本などの時間を考えて、数日前に設定されている。

週末に大事件が起こったら

   新潮、文春は火曜日の夕方。朝日は、自社で印刷部門をもっているから、土曜日夕方までに起こったニュースはカバーできるようだ。

   問題は、現代とポストだが、土曜、日曜は印刷所が動かないから、校了は木曜日の夜である。希に、その日の夕方に大きなニュースが飛び込んでくれば、金曜日の早朝までは何とかなるが、それがギリギリである。

   印刷・製本された雑誌は、金曜日の昼に、全国へ配送される。都内の書店には、金曜日の夕方に届くが、月曜日の朝まで、読みたいお客がいても売ることはできない。

   現代、ポストが金曜、土曜、日曜と寝かされている間に、野球やサッカーの大きな試合がある、大相撲の千秋楽、選挙の投票日も日曜日。週末に大事件でも起こったら、2誌の編集長は1週間、下を向いて歩かなければならない。

   それでは、発売日を変えて、水曜日にしたらいいのではないかという議論が、私が編集長時代にもあった。だが、不思議なことに、水曜日発売の週刊誌はうまくいかないのだ。そこで、現代、ポストはどうするか。

   月曜日の朝、サラリーマンたちに向けて、「さあさあ、とびきり新鮮なネタが載ってる週刊誌だ! 買ってらっしゃい見てらっしゃい」と、表紙や、新聞、電車の中吊りで呼びかける。そのためには、現代、ポスト発の「独自スクープ」を仕込まなければ、手にとってはもらえない。しかし、毎号、そんなネタが入るわけはない。そこで、編集長を始めとする編集部員たちは、必死になって買ってもらえる「企画」を考えるのだ。この2誌が、新潮、文春と、多少作り方の違いがあることがわかっていただけるだろう。

「田母神説」筑紫さんなら…

   長くなったが、そうした予備知識を持って、今週の現代とポストを見比べてみると、創刊2500号記念特大号と銘打った現代の圧勝だ。

   朝日新聞の広告が、全5段ではなく、今週は、全7段。大きい!

   定価も370円と高めだがね。まず、「独占スクープ 金正男の告白『父・正日の今と後継者』」に目がいく。左は、「激白 石井慧『心の病との闘い』」が、読みたい!と思わせる。

   片やポストは、「麻生自公連立は『年利59%のヤミ金』政権だ!」と「小室哲哉の資産を『しゃぶり尽くした面々』」。これでは、失礼だが、手に取るのに躊躇する。

   現代のスクープは、金正日の後継者の一人と見なされている金正男が、中国の幹部に話したことを伝えているのだが、金正日が8月に脳卒中で倒れ、左半身が麻痺して言葉もロクに話せなかったとのこと。後継問題にも触れて、自分たち子供がなることは100%ありえないとし、集団指導体制になると話しているのだ。中国に強いパイプをもっている編集者がいる現代ならではの注目記事だ。

   石井慧は、さまざまなプレッシャーからうつ病になり、北京五輪前にもこっそり「抗うつ剤」を飲んでいたと告白する。支離滅裂な発言で物議を醸した石井だが、「強迫神経症」とも闘いながら金メダルを取った彼は、見た目以上の大物なのかもしれない。「石井もどうやって自分の能力で生存競争を戦っていくか、小さい頃から考え抜いてきたしたたかなヤツなのかもな」(ポスト・ビートたけしの21世紀毒談より)

   筑紫哲也さんが亡くなり、リベラルな視点で発言してくれる羅針盤をまた一つ失ってしまった。新潮、文春もビックリの歴史認識を発表し、参議院での参考人招致でも、持論を曲げなかった田母神俊雄・前空幕長を、筑紫さんだったら、何と批判しただろうか。「いまや『田母神説』を肯定するのが多数派であり、強い違和感を抱くのはむしろ少数派と言っていい」(朝日・田原総一朗のギロン堂より)。私もその少数派を任じているが、田原さん、ともに頑張りましょう。 

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)ほか

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