「荒廃」マンションが介護施設に 「住宅づくりに思想性が問われる」

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   マンションの荒廃が進んでいる。話には聞いていたが、こんなにもひどいとは――。

   北関東のあるマンションでは、管理組合が機能しなくなって、ゴミが散乱し、雨漏りもそのまま。2DKで300万円でも買い手がいない。東京近郊の例では、修繕積立金の滞納が2億9000万円に達して、にっちもさっちもいかず、外装が荒れるまま……。

「短期景気対策にふりまわされた」

   多くがバブルのころ投資目的で購入されたものだ。賃貸でローンを払うというやつ。バブルの崩壊で家賃が下がり、価格も下がって転売もできずで、管理費や修繕積立金が払えない。修繕ができないマンションは買い手がつかない。空き家がふえて、さらに荒廃するという悪循環だ。

   マンションの空き家は、1988年には95万戸だったものが、2003年には241万戸に達した。この裏には、バブル崩壊後の景気対策がある。1993年の「ゆとり返済」、98年からの市街地活性化で起こった駅前マンションブーム、99年からの住宅ローン減税などだ。

   これによって、2000年以降もバブルビーク時を上回る20万戸が毎年作られ続けた結果の供給過剰。なぜそんなことになったのか。

   経済評論家の内橋克人は、「景気対策として住宅建設を考えたためだ」とみる。「だから、数字を出すことが大事で、耐久消費財の大量生産・大量消費と同じに見ていた。購入者は一生の安心、終の棲家としたいのだが、短期の景気対策にふりまわされた」と。

   都市再生機構が空き家を甦らす実証実験をしていた。「減築」といわれる手法で、元の建物の構造を生かして内部を改装する。これが面白い。

   まず住居の交換で、空き家を上層階に集める。そして最上階を取り除いて建物の耐久力を高め、そのうえでスペースを大きくとった付加価値の高いものに作り替えるのだ。新築とくらべ、7割前後の値段になるという。荒廃を食い止める効果にも期待がかかる。

親、子、孫3代で払うローン

   また国交省は来08年度初めて、改修に補助金を出す方針を固めた。総額1000億円。いまあるマンションをどう活用するか、が動きだす気配だ。

   一足早く、ワンルームマンションを介護施設に改装したケースがあった。NPO法人「くらしのネット」がつくったもので、1階はデイサービスセンター。2階からは高齢者向けの賃貸マンションで、バリアフリー、エレベーターもつけた。新たに建てる半分の費用ですんだという。

   過剰供給の悪質マンションがある一方で、不足している部分がある。集合住宅の活用で、この穴を埋められたと、NPOは胸を張った。「地域の公共財」という発想だ。

   内橋は、「在宅介護もままならない現状では、この発想は大事だ。いま住宅づくりには思想性が問われている」と、かつての旧西ドイツの例をあげた。

   戦後のアデナウアー首相が出したアイデアは、「無利子の100年ローン」。親、子、孫3代で払う。社会のルールもきちんと整備する。当然、財産権の考えも違ったものになる。「住宅を見れば、その国がどんな国か、どんな社会かがわかる」と。

   ほとんど無軌道な自由と、それを抑える禁止事項で成り立っている日本の住宅づくりを、あらためて考えてしまう。

ヤンヤン

   *NHKクローズアップ現代(2008年11月20日放送)

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