シロアリ界の「ハゲタカ」が日本を襲う

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   その名を「アメリカ カンザイ シロアリ」という。カンザイは乾材の意。アメリカから入ってきたシロアリである。この外来種がもたらす深刻な住宅被害が今夜のテーマ。スタジオゲストの吉村剛・京都大学生存圏研究所准教授によると、現在の被害は、明らかになっただけで全国88か所、1万件に及ぶ。

費用は800万円以上

   日本で最初に見つかったのは1976年、東京・江戸川区で、輸入木材から発見された。その後、神戸、横須賀、川崎などアメリカからの輸入物を扱う海岸地帯を中心に広がり、ここにきて全国的に勢力範囲を拡大、被害の訴えも増えているという。33年もかかって被害が顕在化した理由について、吉村准教授は、以下の3つをあげる。

(1)日本にもともと生息しているヤマトシロアリに比べて集団が小さく(ヤマト=数万匹、アメリカ=数百匹)、エサ(木)を食べる量も少ない(ヤマトの3分の1~5分の1)。そのため、被害の進行が遅い
(2)最近の住宅が温かく快適になってきて1年中、エサを食べられる
(3) 海外の木材製品がたくさん日本に入ってくるようになった

   ちなみに、ヤマトシロアリは湿った場所でしか生きられず、床下周辺に巣をつくるだけだが、アメリカカンザイシロアリは乾燥していればどこにでも巣をつくる。天井、梁、柱、窓枠、家具と、あらゆる所に出没する。8年間に渡って、家のあちこちを食い荒され、その都度、駆除を繰り返してきた女性は「いつまでたってもという感じで、がっかりしてしまう」と力を落す。女性が掛けた費用は800万円以上だという。

「天災みたいなものだから、行政が…」

   日本の駆除法は対処的だが、『アメリカカンザイシロアリの本家』で高温、低湿度のカリフォルニア州では大仕掛けだ。「燻蒸」という方法で、家を丸ごとテントで覆って家中に殺虫ガスを送り込む。駆除業者はガスマスクを着け、食品は汚染しないように全て特殊なナイロン製の袋に入れる。24時間、ガスで燻すとシロアリは1匹残らず駆除できるそうだ。それでも「9年か10年たったら、また闘わなければならない」と家主は話す。

   日本でも「燻蒸」をやればと思うが、家が密集していて安全が確保しにくい、費用が50~100万円かかる、処理する側のキャパシティも低い、などがあって、ムリらしい。ではどうするか? 地域ぐるみの早期発見、早期駆除が大事だが、住民がまとまって取り組む状況にはない、と番組は伝える。

   吉村准教授は、「地域全体で駆除するために、住民が高い意識を持つ必要がある」としたうえで、「外来種は天災みたいなものだから、行政が責任を持って受けとめ、駆除につとめなければならない」と語る。しかし、お役所は、「行政上の位置づけが明確になっていない。積極的な何かをして行くことが難しい」(保健所)と、あまり期待できそうもない。1度とりつかれたら諦めるしかないのかと、重い気分にさせられた夜だった。

アレマ

* NHKクローズアップ現代(2009年1月19日放送)

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