2024年 4月 20日 (土)

漁船とスーパー直接交渉 市場関係者の戸惑い

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   「こんばんは。クローズアップ現代です」。いつもの国谷裕子キャスターがオバマ新大統領取材で不在。代りにがっしりとした体格の畠山智之キャスターがカメラの前に立つと、テレビ画面が急に6畳間から4畳半程度になってしまったような窮屈さだ。

「市場に出すより高く売れる」

   さて、「食卓が変わる? 鮮魚の新流通」と題した今回の放送。「大手スーパー」(そのスーパーのロゴが何度も大写しになるため、イオンであるとわかる)が昨2008年、島根県の漁協と組み、漁業者と直接取引し、漁で網にかかった魚をすべて丸ごと買い取るという画期的な取り組みをはじめたそうだ。

   番組が取材に行った日には、30種類4トンの水揚げがあった。そのなかには、これまで市場では相手にされなかったような手の平サイズのアジやサバ、夏場に刺身で食べるのが定番で、冬は時季はずれのスズキなども大量に含まれる。

   買い取り価格は、スーパーと漁業者が直接交渉で決定。「市場に出すより高く売れる」と漁業者は笑顔。だが、スーパーはどう売るつもりなのか。売り場では、小さなアジサバはパン粉をつけておき、フライパンで焼く用として販売。スズキは鍋料理用の「特売品」となった。売り場で料理方法を提案することで、客のほうも買いやすくなり、売れ行きは上々。出所がハッキリした新鮮な魚を買えるというので評判もいいという。

   ここまでの放送を見てると、この「新流通」形態はすでに相当広がりを見せてそうな気配だが、じつは「まだまだ規模が小さい」(NHK記者)。イオンで基本的に月に1回、イベント的に開催されているだけで、いまのところ、他のスーパーが追随する動きはないという。従って、鮮魚流通は「大きく変わりつつある」(番組でよく使われる用語)ではなく、「変わろうとしてる」(畠山)という控えめなレベルである。

市場での流通尊重を、と要望書

   しかし、中抜きされる地元市場の仲卸業者や、小売鮮魚店にはまさに死活問題。直接取引があった日、松江水産物地方卸売市場では、ちょうど時化も重なり、市場への入荷量が激減したという。

   「商売あがったりで困りますね。朝から(商品が)何もないから」(仲卸業者)。地元の鮮魚店店主は今後、直接取引が拡大することを警戒し、「地元の魚が地元で売れない。消えてしまうことになりかねないのが一番心配」と語る。仲買業者たちの全国団体は市場での流通を尊重するよう、国に要望書を提出。

   漁業者のなかにも、地元の販売ルートが弱体化したあとでイオンが撤退したり、他の産地に切り替えられた場合どうなるのか、と懸念を表明する向きもあるという。「新流通」の規模のわりに波紋は大きく広がっている。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2009年1月20日放送)

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