「米国取材」国谷キャスター 「人種差別は克服されたのか」

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   国谷裕子キャスターのアメリカ・レポート。2回目のテーマは「人種問題」だ。

   キング牧師の「I have a dream」演説から約45年、初の黒人大統領の誕生は、アメリカ社会が「人種差別」という大きな壁を乗り越えた証ではある。しかし、これで本当に融和が進むのかどうか。 人種差別是正は、1964年の公民権法から始まった。これをもとに、黒人などマイノリティーを教育、雇用で優遇する「人種差別是正政策」がとられ、各州でさまざまな取り組みが行われてきた。

是正政策はまだ必要なのか

   しかし、差別は一向になくならず、黒人の平均所得はいぜん白人の6割である。国谷は、「黒人の大統領が誕生してもなお、差別是正政策は必要なのか」と聞く。

   NHKアメリカ総局の別府正一郎記者は、「まだ、必要。これで黒人は自信をつけるだろうが、逆に差別を口実にできなくなった。黒人が、これからは『Yes you can』になるといっていたのが印象的だった。オバマ大統領も『責任感』という言葉を使った」という。時間が必要だというのだ。

   別府記者のネブラスカ州のレポート。ここでは、昨2008年11月の大統領選と同時に行われた州民投票で、「差別是正廃止」が、58対42で通ってしまっていた。廃止運動の代表は、「黒人というだけで優遇されるのはおかしい。白人にも貧しい人は大勢いる」という。同州は人口の85%が白人だ。

   ネブラスカ大学の4年生の黒人女子学生は、「是正制度は、貧しいものが恵まれた人と対等に競争するために必要だ」という。彼女はテキサス出身。貧しくて進学はあきらめていたが、是正制度のお陰で奨学金を得ることができた。

   同州はまた、差別是正で公共工事の10%をマイノリティーに当ててきた。黒人建設業者は、「仕事の60%が自治体からの受注だが、差別は厳然としてあるし、投票結果の影響は大きい。早急に対策が必要だ」といった。

「富の配分は圧倒的に白人」

   ノースカロライナ州シャーロット市は、是正政策で市中心部の住宅再開発をして、黒人・白人の融和に成功していた。市はさらに学校も、地域や人種ではなく所得水準で分けて、融和を進めていたのだが、通学時間がかかる子どもが出て問題になり、裁判所は違法という判決を出した。

   是正措置は本来ないほうがいい。だれもが、理屈ではわかる。しかし、これらは逆戻りではないのか? 国谷は、人種問題に詳しいプリンストン大学のポール・スター教授に聞いた。

   教授は、「いま廃止するのは正しいとは思わない。是正策は過渡期の措置だが、いまでも役割を果たしている」として、ミシェル・オバマ夫人を例に挙げた。

   「入学の経緯(是正制度かどうか)は知らないが、彼女はここの学生で、成績優秀でハーバードのロー・スクールに進んだ。大学がいまの彼女をつくった。制度は中間層の形成に役立っている。オバマ大統領の誕生も成果なのだ」と。

   「では、差別は克服されたのか」と国谷。

   スター教授は、「まだだ。貧困と不平等が残っている。失業は黒人が多く、富の配分は圧倒的に白人だ。オバマ誕生だけでは取り除けない。何年もかかる」という。そして、オバマのなすべきことを、「大統領の職務で成功すること。成功すれば、対立を和らげるあらゆる可能性が生まれる」と明快だった。

   オバマ大統領は、長い長い道のりの、ほんの一歩を踏み出したにすぎないことがよくわかる。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2009年1月22日放送)

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