2024年 4月 19日 (金)

「銭ズラ!」となんたる極悪!! でも楽しみ~♪な訳

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   <銭ゲバ>松山ケンイチはすごい。垂れた前髪からのぞく目の不気味さといったら、もう……。それを強調するためか、松山の顔のアップがやたら多い。まあ、私は松山が好きだからいいんだけど。

   蒲郡風太郎(松山ケンイチ)の少年時代(齋藤隆成=子役)は極貧だった。父親(椎名桔平)は酒飲みのろくでなし、たまに帰ってきては母親(奥貫薫)から金をむしり取っていく。母親は病身をおして水産物加工場で働いているが、給食費も払えない。級友ばかりか先生にまでバカにされる毎日。舞台は海辺の町だけど、決めゼリフの「銭ズラ!」からすると静岡県辺りかしら。

「こんな陰惨な話を…」

   これでもか、これでもかとばかりに不幸は襲う。風太郎の貯金箱まで持ち出そうとする父。すがりつく母。蹴倒す父。風太郎は母をかばおうと我を忘れて向かっていく。が、突き飛ばされた拍子に、左目は机の角にあたってザックリ。母も医者にかかるお金がなく、死んでしまう。それ以来、風太郎の世界の中心は「銭」になった。

   「こんな陰惨な話をよくテレビドラマにしたものだ」という評があった。たしかに現代日本のドラマにしては、絵に描いたような不幸と悪。歌舞伎みたいだ。一昔前なら「こんなベタな話」と笑えたかもしれない。しかし、なぜか笑いきれない今が悲しい。

   原作のマンガ(ジョージ秋山)が連載されたのが1970年。設定でその頃に大人だった主人公の少年時代は、戦後の貧しさが日本中に残っていたはずだ。急速に復興する中で、波に乗った少数の人々と、続いてそこそこになりつつ人々、そしてまるっきり乗れないままの貧しい人々。生活保護や給食費免除などのセーフティネットもまだ十分ではなかっただろう。

   そして年月が過ぎ、「一億総中流」と言われた時代を経て、「貧困」が再び目に見える姿を現してきたようだ。だから、風太郎の貧乏や不幸にもリアリティを感じてしまうのだ。でも決定的に違うのは、マンガが上り坂の中での貧乏だったのに比べ、今は下り坂の中の貧困だということね。

   時代背景を現代にしてあるので、風太郎は派遣労働者である。仲間と口もきかず、ひたすら働き、金を貯め込んでいる。何もないアパートの畳の下には一万円札が敷き詰めてある。銀行も信頼しないらしい。しかし、一方では、父もまともで、幸せだった幼い頃を思うと、号泣せずにはいられない。心の奥では、幸せをはげしく求めているのだ。

   ある時の派遣先は造船会社。偶然見かけた社長の娘・緑(ミムラ)は、少年のころに接点のあった少女だった。ほのかに甘く、それゆえ深い屈辱の思い出。

   彼女を手に入れようと決意してからの風太郎はすさまじい。第2話で、彼女に近づくため、まず妹の茜(木南晴夏)を籠絡するが、そのやり方が卑劣きわまりない。顔にアザがあり、足も不自由な茜。その淋しい心に「生まれながらに幸せな奴を見ると腹が立つよね。ぼくも同じだからよくわかるよ」と入り込む。

   そして茜の耳を両手でふさぎ、顔を見ながら「おれは自分が醜いから美しいものが好きなんだ。お前のような醜い顔は見たくもない。しかし美しいものを手に入れるためには我慢するんだ」。聞こえない茜は愛の言葉だと思い、「手をどけて聞こえるように言って」。すると「愛している。そのアザもみんな愛している」。なんたる極悪! 楽しみにしてます。

カモノ・ハシ

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