テレビドラマ史に残る 「清張もの」田村正和の名演技

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松本清張生誕100年特別企画「疑惑」(テレビ朝日) 2009年1月24日 21時~

   脚本(竹山洋)と主演の2人(田村正和、沢口靖子)の功績で傑作になった。鬼クマとメディアで囃された悪女・球磨子(沢口)の夫殺し裁判を描いている。埠頭から車ごと海に落ちて、高級料亭の主である夫(小林稔侍)は死に、妻はガラスを割って助かるが、夫に掛けられた巨額保険金がばれて殺人犯として死刑を宣告される。
   国選弁護人の佐原(田村)が、前科のある球磨子のわずかな人間性ある部分に目を留め、1人で彼女の過去を調べ上げ、ついにどんでん返しとなるのだが、最後の方の控訴審・最終弁論シーンでの佐原の弁論場面は、テレビドラマ史に残る名演技といっても過言ではない素晴らしさであった。ドキドキするほどの緊迫感であり、長い1人セリフをよくぞ田村はここまで演じたものである。
   球磨子役の沢口についてはある種の感慨がある。鮮烈なデビューとなったNHKのテレビ小説「澪つくし」で、余りに演技が下手なので、共演の加賀まりこが呆れて悪口でばらしたこともあった。そんな彼女が中年になって、美貌はまだ残っているが、荒んだ過去を引き摺りつつも、たった1つの愛に縋りつかざるを得なかった哀しくも愛情に飢えた女を印象深く造形したのである。
   女記者(室井滋)が書いた球磨子追及記事によって、さしたる証拠もないのに逮捕されてゆくプロセスや、メディアスクラムの恐ろしさはテレビ時代の裁判のあり方への警鐘としても見ごたえがある。

(黄蘭)

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