ノート型PC激安路線 「日本メーカーなぜやらない?」
外では円高による輸出への逆風、内では押し寄せる激安家電の荒波―内憂外患の中で家電業界が存続の岐路に立たされている。
2万9000円台がズラリ
番組は、日本の市場を席巻しつつある激安ノート型パソコンを例に、未曽有の危機をどう乗り切るか取り上げた。
家電量販店のパソコン売り場、2万9000円台のノート型パソコンが並ぶ。1年前までは普通のノート型パソコンなら10万円前後はした。しかもパソコンだけに留まらない。テレビ、カーナビ、ビデオカメラにも格安品が……
激安ノート型パソコンの火付け役は、台湾の「アスース・テック社」。日本市場に登場してわずか1年足らず。すでに60万台を販売、ノート型パソコン市場の4分の1を占めるまでに伸ばしている。
従来型とどこが違い、低価格が実現できたのか。番組スタッフが台北市のアスース・テック社を取材した。
激安ノート型パソコンの開発部門にいる社員は280人。平均年齢は29歳。2か月に1度の割で新製品を打ち出しているという。
もともとはソニーやアップルなど海外パソコンメーカーの委託生産で成長してきた会社だが、景気に左右されやすい委託生産から、軸足を自社ブランド製品に切り替えた。
で、日本市場に投入したのが激安ノート型パソコン。同社のCEO(最高経営責任者)は、機能を増やすのではなく、逆に絞り込んでシンプルな機能にしたのだと、次のように語った。
「今では、通信機能さえあればインターネット上で表計算もワープロもできる。高機能は余分です。インターネットの発展の中にビジネスチャンスがあると確信しました」
確かに、激安ノート型パソコンには表計算、ワープロ機能はない。できるのはインターネットとメールだけだ。
発想の独自性が勝負
当然出てくる疑問は「日本でもできるのに、何故やらないのですか?」(国谷キャスター)。これにアスキー総合研究所の遠藤諭所長は次のように答えた。
「今はハイテクのパソコンで音楽を聴いたり、映画を見たり大衆化してきた。その反面、シンプルなもの、安いものが求められるようになった。そのショックが増幅しているうえ、メーカーにしてみれば、10万円、20万円の製品を作って来て、その市場を壊すわけにはいかないという事情がある」
では、高品質・高機能を売り物にしてきた日本のメーカーは、どう反応しているのか。
大手パソコンメーカーの富士通は高品質・高機能へのこだわりと低価格商品を追いかけるべきかのはざまの中で、いまだ答えは出ていない。「1年で壊れるのでは(高品質できた)富士通のプライドが許さない」(技術担当者)という。
しかし、これまでの路線でグローバル競争に勝てるのか?
国谷の「今後どうしたらいいのでしょうか?」に遠藤所長の答えは……
「どういうメーカーの収益、売り上げが伸びているかというと、映画や音楽の配信サービスを取り込めるアップルの『iPod』、アメリカのビジネスマンたちが使っているブラックベリーの『スマートフォン』。今後は、製品自体の高機能性というより、独自性を出した発想が勝負になると思う」
パソコンに限らず携帯電話もそうだが、日本人ユーザー、日本市場を視野に置いた発想だけでは、もはや生き残れない。独自性のある、『世界標準』の発想が求められているのだろう。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2009年2月4日放送)