マスコミやネットの「脅威」 「加害者家族」が浮き彫りにするのは…(誰も守ってくれない)
(C)2009 フジテレビジョン 日本映画衛星放送 東宝
<誰も守ってくれない>ごく平凡な15才の少女・沙織(志田未来)は、ある日突然、自分の兄が世間を騒がせていた小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されたことを知らされる。その時から家族は崩壊し、加害者家族として世間から迫害される生活が始まった。刑事の勝浦(佐藤浩市)は彼女をマスコミや世間の目から保護する任務を任されたのだが……。
加害者家族の保護とは、劇中に登場する新聞記者の言葉を借りれば「税金の無駄使い」「遺族は犯人の家族にも死んで罪を償ってほしいと思っている」と言われている。犯罪を扱うときの一種のタブーともいえるテーマを扱った本作はかなりの意欲作といえる。手持ちカメラの臨場感あふれる映像はドキュメンタリーを思わせ、かなり重厚なタッチで描かれていく。
自宅を取り囲み、避難先も嗅ぎ付けてくる過激なマスコミの取材と、インターネット上で行われる誹謗中傷や個人情報の暴露は見るものの背筋を凍らせ、少女と刑事の逃避行は逃げ場のない焦燥感に駆られていく。しかし、いくら何でも加害者家族を被害者遺族の経営するペンションに連れて行くのはどうかと思うし、終盤に「ネットの住人」が起こす事件にしても、明らかにやりすぎだ。確かにドラマ的には盛り上がるシーンだが、リアルな社会派映画を求めていくと肩透かしを食らう可能性がある。
そして、加害者家族と被害者遺族、警察、マスコミ、ネットなど、確かに今の時代を捉えるために必要な要素かもしれないが、多くを取り上げすぎて人が今ひとつ描けておらず、全体的に薄い印象になってしまっている。
ただ、監督の君塚良一が語るように本作は社会派エンターテイメントであり、こういったテーマを一般受けするように仕上げたことは評価できるし、今の社会に対するメッセージは十分に感じることができる。ひょっとすると今後の社会派映画の一つの指針になるかもしれない。
ジャナ専 ぷー(JJC漫画研究会部長)
オススメ度:☆☆☆