留まる女と去る男 「体温」あふれる生々しい描写(へばの)

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(C)team JUDAS
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   <へばの>映画の舞台は、核燃料再処理工場がある青森県六ケ所村。工場で働く治と父親と2人で暮らす紀美は結婚を控えていた。結婚して、子供をもうけ、新しい家庭を築く――2人はささやかな、ごく普通の幸せを願っていた。

   ある日、治は作業中にプルトニウムの内部被曝に襲われる。紀美との間に生まれてくる子供に放射能汚染による影響が出ることを案じた治は姿を消し……

   青森の雄大な自然の中で力強く生きる紀美の姿は、潜在的な女性の強さと、「踏み留まり続ける者の強さ」を感じさせる。人間は「出ていく」ことより「留まること」の方が実際は勇気がいることなのかもしれない。そんなことを『へばの』は、体温豊かに観る者に思わせる。

   ピンク映画を思わせるほどの、生々しいセックスシーンなどには、最近の日本映画が表してこなかった体温があふれ、「ここに人間がいる」というリアリティーを生んでいる。

   また、その体温の妨げにならぬよう音響はほとんど使われていない。故に青森の風景をバックに、安全地帯の『恋の予感』が流れるシーンなどは、効果抜群である。

   懐かしい歌謡曲と青森の雄大な自然のコントラストは、「観る者の記憶を呼び覚ます」ものであろう。

   六ケ所村の生活が、もう少し描かれても良いと思ったことと、すぐに人物に寄ってしまうカメラワークなどには物足りなさを感じたが、抽象的なテーマを力強く、体温豊かに表している『へばの』は「日本映画」というものに強烈に何かを訴えるパワーがある。

川端龍介

   オススメ度☆☆☆☆

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日本ジャーナリスト専門学校
通称ジャナ専。東京都豊島区高田にあるマスコミの専門学校。1974年の開校以来、マスコミ各界へ多くの人材を供給し続けている。

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