労働者の「敵」か「味方」か ワークシェアリングの素顔

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   雇用を守るために各企業が導入を進めるワークシェアリング――「リストラをせず労働時間を短縮することで仕事を分ち合う」(ナレーション)働き方といえようか。

   激しい派遣切りの最中、経営者サイドから出てきた考え方である。労働者側は、体の良い賃金カットではないかと警戒を強める。ある労組幹部は「正社員の暮らしを守るべき」と、非正規社員切りも致し方ないかのような口ぶりで、「ワークシェアリングは長くはもたない」と話す。非正規社員の方も、今の「緊急避難型」ワークシェアリングは現実的ではないと主張する。正規社員との収入格差がハードルになっているのだ。

給与削減に直面

   ゲストの樋口美雄・慶應大学教授が、その理由を説明する。正社員は雇用、生活保障の対象になってきたが、非正規社員は対象外と思われてきた。前者は生活手当が支払われ、能力によって評価されたが、後者は時間給が一般的だった。給与の決め方が違う中でワークシェアリングを行う際には、給与削減をどうするかの問題に直面する、という。

   そこで、樋口教授の勧める打開策が、同一労働・同一賃金を前提とする「多様就業型」ワークシェアリング。このスタイルはオランダが先進国だ。オランダでは10年前から正社員、非正規社員という立場の違いや、働く時間の長さによって賃金差別することを法律で禁止している。こうしたルールづくりには国が積極的に関与したという。そして、賃金基準は、電機、自動車など産業毎に企業のワクを超えて労使が交渉し、何段階ものランクが決められる。細かな賃金設定が300を超える業種毎につくられているそうだ。

   オランダでは、個人が労働時間を選べるため、女性や高齢者が就業可能になって社会が活性化、ひいては経済成長を促し『ダッチ・ミラクル』(オランダの奇跡)をかなえたと、樋口教授は語る。

能力を数値化、時給制に

   日本でも「多様就業型」を実践する会社がないわけではない。番組は、兵庫県の情報処理会社のケースを紹介する。請求書や伝票の入力作業を請け負うこの会社は、正社員、非正規社員の区別をなくし、徹底した能力の数値化を図り、時給制にした。全社員の入力作業能力の平均値を基準として、印刷作業などは1.6倍、ホームページ作成などは2倍という具合に割り振る。作業効率が高ければさらに時給が上がる。誰でも1か月前に上司に申告すれば、自由に働く時間を選べる。しかし、この方式は広がりを見せていない。1企業の試みに止まり、オランダのように国、労使、社会が総体で取り組むまで至っていないからだ。

   樋口教授は「少子高齢化で労働人口の減少が見込まれる日本では、持続可能な社会、企業の実現に向けて人を大切にしなければならない」「国は、長い時間働けない人を差別せずに、失業保険、年金などの社会保障の適用を拡大し、その人たちも入れるようにして、安心して働けるようにする必要がある」と述べた。

   政治状況、年金問題の現状を見ると、「多様就業型」の導入など、いつの世のことやら、という思いにかられる。

アレマ

NHKクローズアップ現代(2009年3月9日放送)

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