「A級戦犯」広田弘毅と「潔さ」 そのドラマの出来映えは…

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「落日燃ゆ」(テレビ朝日) 2009年3月15日 21時~

   城山三郎が書いたA級戦犯・広田弘毅半生記のドラマ化である。筆者が城山三郎を担当していた大新聞の記者から直接聞いた話では、城山はこの伝記を依頼された時に気が進まなかったという。それはそうだろう、筋金入りの戦中派であり、一貫して最近の右傾化を忌み嫌っていた彼にとって、第2次世界大戦の戦犯として絞首刑に処せられた人など、決して書きたくはなかったはずだから。
   それでも書いたのは、忖度するに、広田がA級戦犯絞首刑7人の中の唯一の文官であり、東京裁判で自己弁護をしなかった潔さがあったからと思われる。ドラマもその辺を強調しているが、今ひとつわからないのは、広田が何故、国を動かした幹部の1人として(首相、外相経験者である)、自己弁護といかぬまでもわが国のために、戦争に傾斜して行ったやむにやまれぬプロセスを『国のために』説明しなかったのか。近衛の自殺ほか、事情を知る幹部らの死によって、生き残った広田には説明する重い責任があったと筆者は考える。
   ただ自己弁護をしなかった潔さだけを声高にいわれると犠牲になった多くの国民は浮かばれまい。ドラマも全く答えていず、弘毅(北大路欣也)と妻(高橋恵子)と子供たちの愛情物語で終ってしまっている。全く物足りない。暗い画面や重厚な調度など、戦前の雰囲気のよく出た映像と、2・26事件における群像処理など、見所はあったが、肝心の人間凝視にはいささか不満の残る脚本である。

(黄蘭)

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