松本清張のドラマ「駅路」 スローテンポでも弛緩しない訳

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「駅路」(フジテレビ) 2009年4月11日 21時~

   松本清張生誕100年記念作品とのタイトル通り、脚本は故・向田邦子が残したものを矢島正雄が脚色した力作である。演出は「北の国から」の杉田成道、ドラマの推移が昭和天皇の崩御前後と絡めて描かれている。かつて杉田が演出した倉本聡ドラマでも、昭和天皇の御大葬がベースになったものを見た記憶があるので、ドラマ演出家として御不例は関心をそそるものなのかもしれない。
   定年退職直後に失踪した真面目な銀行マン(石坂浩二)が、実は広島赴任時代からの愛人慶子(深津絵里)と第2の人生を歩もうとして失敗、連絡係の慶子の従姉妹たちに所持金目当てに殺される話である。育ちのいい妻の冷たさと、計算高い愛人の2人の女を演じる十朱幸代と深津の2人が見事な芸達者ぶりを見せる。
   もちろん、5年ぶりにTVドラマ出演した役所広司が、これまた不倫の娘を抱える初老の刑事の哀歓を滲み出させる好演で、事件も単純だし、テンポも今のドラマとしてはノロいのに、決して弛緩しないのだ。不倫がバレたばかりの宮崎あおいの亭主・高岡蒼甫が、従姉妹のヒモ役でキレる男に扮していたので、「タイミング良過ぎ」と笑ってしまった。高岡にこの役を振ったスタッフは慧眼(?)か。
   ドラマは脚本と演出の成否にかかるを証明したような作品で、派手なアクションもおどろおどろしい殺人場面がなくてもサスペンスは醸成できる、人間心理の不可解さと哀れを描いて、佳作となった。

(黄蘭)

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