アフガン少女の小さな冒険 19歳イラン女性監督が描く(子供の情景)
配給:ムヴィオラ、カフェグルーヴ
<子供の情景>舞台は、戦乱により古代遺跡が破壊されたアフガニスタンのバーミヤン(作品の冒頭でニュース映像が、タリバンによって破壊された仏像を映す)。そこで暮らす6歳の少女バクタイは、隣に住む少年アッバスが朗読していた学校の教科書に載っているおもしろい話に興味を示し、自分も学校に行くことを夢見る。学校に通うにはノートと鉛筆が必要だとアッバスから知らされたバクタイは、お金を貰うために慌てて母親を探すが、見つからない。なんとしても学校に行きたいバクタイは・・・
監督はイランを代表するモフセン・マフマルバフの娘のハナ・マフマルバフ(完成時19歳! ちなみに姉のサミラも映画を撮っている)。ストーリーは「バクタイの1日の小さな冒険」といったところ。学校に行くためにあちこちを歩く少女を、カメラは引きのショットで捉えることが多く、比較的広く録れている効果もあり、砂と岩の乾いた大地で生活する現地の人々の過酷な状況も同時に伝え、画面上には、ドキュメンタリー作品のような雰囲気も漂う。
「我々はタリバンだ」などと言い、戦争ごっこをする少年グループに、バクタイとアッバスはいじめられてしまう。純真な少年たちにも戦争がもたらす影響は浸透しているというのは、どうやらアフガニスタンの現状であるようだ。
戦争の不条理性、また大人が子供に与える影響力などの問題意識、メッセージを、子供を描くことにより――バクタイの「戦争ごっこなんか嫌い」という台詞や、アッバスの「助かりたかったら死ぬふりをしろ」という台詞など――際立たせている。
その子供たちの澄んだ瞳と、作品内にも映し出される実際の空爆の映像との対比は、余りに鮮やかで、余りに残酷である。戦争で最も損害を被るのは、未来を構築していくはずの子供たちなのだから。
川端龍介
オススメ度:☆☆☆☆