庶民見るよりお偉方見る 中国・地震復興のひずみ

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   1年前に起きた中国・四川大地震では、日本全体の3分の1に相当する地域が被害を受け、7万人近くが犠牲になり、520万戸の住宅が損壊したという。

   「大災害が発生したあとの取り組み、危機への対応のあり方は、その国の姿を浮き彫りにする」(国谷裕子キャスター)。番組は、中国政府の復興策と、その陰で戸惑う人たちの模様を伝えた。

農民追い出し「新しい町」建設

   景気刺激のために用意した57兆円の多くを被災地対策に振り向けるなど、中国政府は復興に力を注いでいる。被災地の1つ、綿竹の表通りはビルが立ち並び、道路の修復も進み、交通量も回復した。が、1歩、裏に回ると地震の傷跡は生々しく残る。住んでいた集合住宅に亀裂が入り、仮設住宅で暮らす人には修復補助金が出るが、満足な額ではない。年間収入7万円の出稼ぎの男性は「切なくなります。貯えはあまりないのです」と話す。政府は今(2009)年12月までに全ての仮設住宅を取り壊す予定だ。住民たちの不安はつのる。

   もう1つの被災地、北川県の中心部は瓦礫の町と化し、いまだに数千人が行方不明といわれる。政府はこの町の復興を断念、大規模な移転計画を打ち出す。別な農村地域を更地にして住宅、商業施設、工業団地などを建設し、ここに北川県の住民を移そうとするもの。もとから住んでいた農民はいったん立ち退かせ、町が出来上がる2年後に戻す。農民たちは、引っ越し先と、農業以外の仕事を探さねばならない。生活環境は激変する。近くの町は移転需要で家賃が高騰しており、毎月2000円の家賃補助では引っ越しできない。「町の住民のためになぜ農民が立ち退かなければならないんだ」と、農民は政府に不満をぶつける。

   綿竹でも北川県でも、政府は強い姿勢で復興を推し進める。当初の3年計画を2年に切り替えたという。地方政府の若い役人たちはスピードと達成度を誇る。そのツケが民衆に回っているといえるかもしれない。

   景気後退の中で復興計画を早めることが相当、無理をもたらしているのでは、と尋ねる国谷キャスターに対し、スタジオゲストの興梠一郎・神田外語大学教授は「新北川をつくれとか、都市建設のシンボルにしろとか、中央政府の指令が出ると、地方の役人が突っ走ってしまう。下を見るより上を見る方が自分の出世にはメリットになるから」と述べる。そして、復興プロセスには、「上からの強力な開発で早く成長してはきたが、1人ひとりの民意を無視して強引に進めてきた強さと弱さ、二面性がハッキリ出た」と語る。

   冒頭の国谷キャスターのことばが象徴する中国の現状リポートだった。

アレマ

   *NHKクローズアップ現代(2009年5月11日放送)

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