「木くず」に大注目 上がる値段・下がるCO2

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   「木質チップ」というのだそうだ。昔は「木くず」といった。これがいま『一石二鳥』の新しいエネルギー源として注目されている。

   もとが木だから、燃やしてCO2を出しても、やがて森林が成長すればこれを吸収するというので、地球温暖化の論議のなかでは、排出量ゼロと考える。つまり石油燃料と置き換えていけば、そのままCO2削減になるというわけだ。

排出量85%削減の工場も

   この木質チップを燃料とする発電が、「木質バイオマス発電」。2003-07年の4年間に、発電量は10倍になった。といってもまだ32キロワットだが……これが様々な形でいま、1つの流れになりつつある。

   福島・いわき市の製紙工場では、2つの木質バイオマス発電所の自家発電で、電力をまかなっている。昨08年10月にはついに重油使用ゼロになった。木質チップを年に18万トン。これで従来40億円の電力コストを半減した。CO2排出量は85%削減できるという。

   「国の目標が2050年に半減ですから、われわれは十分先取りしている」と同工場は胸を張る。

   独立ビジネスとしての発電所もある。千葉・市原市の発電所は、地元の造船所、商社などが出資して昨年2月に稼働した。いま、出力5万キロワット、一般家庭2万世帯分を東京電力に売っている。ところが昨年10月、木質チップが集まらなくなった。目下は計画の8割程度。

   木質チップの主たる原材料は住宅の廃材だが、不況で住宅の着工が減ったため、住宅の解体もまた減ったのだ。一方で、木質燃料の需要は伸びているから、その不足はかなり深刻。値段も上がった。

   熊崎実・筑波大学名誉教授は、「廃棄物系が使い尽くされたということ。だが、もう1つある。間伐材だ。多くは切りっぱなしで、これが2000万立米もある。木材として出てくる量と同じ量が放置されている」という。理由は搬出コストが高いこと。廃材だとトン3000円だが、間伐材だと1万円を超える。

   高知県はこれに注目した。日本一の森林面積を持つが、3年前までは9割が「切り捨て間伐」だった。県はこれを木質チップにして県内の企業に使ってもらい、そのCO2削減分を県が引き取り、環境庁の取引制度で、他県の企業に売るのである。

「地域の自立はエネルギーの自立から」

   あるセメント工場では半年で899トンのCO2削減になり、これをショッピングセンターを経営する企業が、330万円で買った。自力では削減できないからだという。いままた1039トンを売りに出しているが、すでに企業からオファーが来ているという。

   山形・最上町では、町が広い区域の間伐をまとめて引き受け、搬出コストを大幅に下げた上で、木質チップを燃料に、町立病院や福祉施設などの冷暖房、給湯を行っている。チップの値段はほぼ重油に近いという。来年には、中小企業が共同でエネルギー供給会社を立ち上げる予定だ。

   国谷裕子は、「地域の活性化にもなるのでは」という。

   熊崎名誉教授は、「地域の自立はエネルギーの自立からだ」と、オーストリアの寒村が木質チップから太陽光、風力発電と活性化した例を紹介した。「地域がまず知恵を絞ること。国がそれを助ける」と。

   バブルの頃は廃材はお荷物でしかなく、ニュースといえば不法投棄の話だった。それが新たな光を浴びている。また久々に見る地方の元気な姿に、つくづく知恵は無限だとの感を深くした。

ヤンヤン

   *NHKクローズアップ現代(2009年5月28日放送)

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