抗うつ薬と「制御不能」のいらつき 「人間関係が病気を救う」

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   <テレビウォッチ>抗うつ薬「SSRI」の薬効は折り紙付きだ。現在100万人が服用しているといわれ、「これがなかったら、私の人生はどうなっていたか」という声もある。だが、一方で服用者が他人に暴力を振るう事例が出ているという。いったいどういうことか。

   この10年間に268件。全体では数は少ないのだが、なかには刑事事件になったものもあって、うち4件について厚労省は先(5)月、SSRIの影響を認定して、製薬会社に「他人への攻撃性を誘発する可能性」を表示するよう求めた。

処方上の注意守らない医師も

   最初に認定された事例は、10年前の全日空機ハイジャック事件である。20代の男が機長を殺害して旅客機を操縦した事件で、SSRIを服用して心神耗弱状態にあったとされた。

   また、札幌の20代の女性は4年前、包丁をもってコンビニから20万円を奪って強盗容疑で逮捕された。SSRI服用後「普通のいらつきと全く違う。制御不能でまったく別の人間になった」という。裁判で精神障害を疑われ、鑑定の結果、SSRIの影響があったと判断された。

   40代の男性は、服用2時間後に、小言を言った妻を工具でなぐり、頭に全治1か月、20針の大けがをさせたが、「ほとんど覚えていない。理由がわからない。自分が自分でない状態だった」という。

   これらを招いた原因はそれぞれ異なる。コンビニ強盗の女性の場合は、医師の処方の誤りだった。うつ病と診断されてSSRIをはじめ日に2錠、6週間後に3錠、3か月後一時中断してのち、4錠にした2週間後に事件を起こした。3錠の段階でイライラがつのり、奇声を発したりカベを蹴ったりして、家族も恐れるほどだった。

   が、医師は症状が改善しないために、安易に量をふやしていた。とくに、副作用の懸念から「急に中断しないように」とある、処方上の重要な注意を守っていなかった。

   脳と薬のメカニズムはよくわかっていない。しかしアメリカでは、コロンバイン高校での銃乱射事件などいくつかの事件で、SSRI服用があったことから、今回厚労省が求めた「攻撃性」の注意書きが、すでに5年前から義務づけられている。

副作用情報の共有システム構築を

   京都・宇治の病院では、薬の使用を最小限に抑え、心理療法で患者の話にじっくりと耳を傾ける。この方法の効果が高いことは実証ずみなのだが、時間がかかるために実践している病院は少ない。

   が、この病院では、医師だけでなく看護士、薬剤師、栄養士、臨床心理士などがそれぞれの視点から聞き取り、観察、判断し、討議をして診断、処方を決める。複数の聴取だと誤診も防げるし、診療の効果もあげているという。

   科学ジャーナリストの小出五郎は、宇治の試みを「人間関係が病気を救うことがよくわかる」という。また、「薬の副作用情報をみんなが共有できるシステムを全員参加で作らないといけない」とも。とにかく、日本にはまだシステムがないのだ。

   レポートの中に、薬剤師が「うつ病にしては陽気すぎる」というシーンがあった。また、栄養士が食生活から心の状態をはかる様子もあった。医とは本来そういうものなのであろう。

   日本うつ病学会の専門医が「心の問題は簡単ではない。薬はいろいろある治療法のひとつにすぎない」といっていたのが、印象的だった。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2009年6月1日放送)
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