天安門事件「メディアから消滅」 中国の民主化は進むか

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   <テレビウォッチ> 1989年6月4日、民主化を求めて天安門広場に集まった市民、学生に対して中国政府は軍を出動させて武力鎮圧し、319人の死者(政府発表)を出した――その天安門事件から20年目の日、クローズアップ現代は、「事件は中国にどのような影響を与えたのか、民主化運動の行方はどうなるのか」を探る。

   番組は李大同というジャーナリストを登場させる。事件当時、共産党青年団機関紙の記者だった彼は、言論の自由化を求めるメディア関係者1000人の請願書を政府に提出した。20年前を振り返ってこう語る。「党が軍隊を投入し丸腰の大衆を虐殺することは、いかなる国、時代においても間違いであり、犯罪だ。政治は妥協の芸術であり、対立ではない。最終的に両者が利益を得られるようにすべきだが、1989年は共倒れし、両者とも負けた」。

ネット利用し大デモ組織

   事件後、彼は記者の職を奪われ、共産党青年団が運営する研究所の閑職に追われる。

「当局は天安門事件をすべてのメディアから消滅させ、中国の歴史上なかったことにしようとしている」(李大同)。

   この点についてスタジオの加藤青延(NHK解説委員)は「改革開放30年の中であの事件が最大の汚点だったことを中国共産党も自覚している。ただ、当時の指導者の判断が正しかったという立場を崩せない。共産党支配の正当性を否定しかねないからだ。しかし、武力制圧の正当性を声高に主張するのも共産党のイメージを悪くするので避けたい。事件を封印したい、人々の記憶から消し去りたいのが本音」と説明する。

   歴史の表面から忌わしい事件を消去するためのように、政府が推進したのが経済の改革開放だった。2000年以降、8%を超える経済成長率を達成することに成功した。

   一方で、経済の急発展は、環境破壊、貧富の格差拡大などの問題も招く。権利意識に目覚めた市民は黙っていない。アモイ市政府が住宅街の近くに石油化学会社の誘致を計画したときは、インターネットを利用した市民が大デモを組織し、市の計画を頓挫させる。最近、各地で起きているこうした抗議運動が、地方当局に対するものである限り『ガス抜き』として許容するのが中央政府の姿勢だと、加藤は述べる。天安門事件から得た教訓といえるかもしれない。だが、中国政府が天安門事件とまともに向き合う気配は見えない。そんな日はくるのだろうか。李大同はこう言う。

「中国の民主化の歩みはまだまだ時間がかかる。30年、50年、あるいは100年かかるかもかもしれない。毎日、1歩1歩、積み重ねるしかない。中国では短時間で大きく社会を変化させることは不可能なのだ」

   やはり中国である。一ジャーナリストの悠揚たる物腰、物言いが印象的だった。

アレマ

   *NHKクローズアップ現代(2009年6月4日放送)

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