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介護が貧困をうむ 「仕事続けられない」理由

   <テレビウォッチ> 家計の維持に悩みながら、家族の介護を続けるのはどうすればいいのか……。こんな苦境に立たされている40~50歳の働き盛りの男性が急増しているという。

   その背景には、夫婦共働きや夫婦共に一人っ子、独身世帯の急増という家族構成や社会環境の変化もあるが、実情にそぐわない国の介護休業制度や介護保険制度の実情も看過できない。

残業すると「保険10割負担」

   番組では、そうした仕事と介護のはざまで悩む働き盛りの男性のケースを追い、両立できる社会にするにはどうすればいいかを探った。

   家族の介護は、依然として妻か娘が介護の担い手になっているのが現状だ。とはいえ、総務省の調べによると、家族の介護のために男性が離・退職するケースが2006年から急増している。介護理由の離・退職者は、年間10万人前後だったのが、06年には14万4800人に。半数は、40~50歳代の働き盛りの男性だ。

   神戸市内の旅行会社に勤務するサラリーマン歴30年以上の男性(58)は、働きながら妻(62)の介護をしている。

   妻が心臓病で倒れたのは今から13年前だが、暫くして若年性認知症と診断された。「徘徊が3~4回ありまして1人にしておけなくなった」という。

   現在、男性は毎朝8時になるとやってくるヘルパーに妻を預け会社に出勤。ヘルパーが妻を9時までにデイサービス(通所介護)の施設まで送り届ける。仕事を15時に終えた男性は、16時までに施設に妻を迎えに行く。

   男性が仕事と介護の両立の保っていけるのも「15時までの勤務」を社長が理解し認めてくれたからだ。

   この会社には、介護休業制度があるが、男性は、休業期間(延べ93日)中は給料がもらえないために利用しなかった。それでも、仕事量が減った分、年収は以前の半分250万円まで落ち込んだという。

   しかし、収入を増やそうと残業をするとデイサービス時間の延長費用がかさみ月20万円になることもあった。

   8時から16時までのヘルパーやデイサービスの保険は「1割負担」だが、16時以降になると「10割負担」になるのだ。

   男性は「残業したくても出来ない。夏の旅行シーズンを前に、このまま仕事が続けられるか限界を感じている」という。

「制度そのものに欠陥」

   両立がうまくいかず仕事を辞めた人もいる。

   長野県内のゴム製造会社に勤務していた男性(50)は、8年前に母親が認知症に、その3か月後には父親も認知症と診断された。

   介護休業制度の適用を会社に相談したが、断られた。仕事に未練があった男性は辞表を10回ほど書いては破りしたが結局、辞めた。

   キャスターの国谷裕子は「働き盛りの男性の姿は、いかに両立が難しいかを象徴しているように見えますね~。しかも介護休業制度の取得率は1.5%と非常に低い」と。

   番組に出演した介護に詳しい立命館大の津止正敏教授は介護イコール貧困という新しい状況が生まれてきていると、次のように指摘する。

   「介護休業制度は、制度そのものが知られていない。同時に制度そのものに欠陥があるということでしょう」

   さらに「介護保険制度の趣旨は、(介護される)本人自身がテーマで、介護者の実情は勘案されていません」「企業の大小でなく、介護を支え合うという文化が企業にあれば支え切れると思う」

   苦境の同僚を支え合う企業文化。バブル経済以前にはそんな文化、気風が、今よりは多少あったような気がするのは、気のせいか??

モンブラン

   *NHKクローズアップ現代(2009年6月10日放送)