「診療できる看護師」拒否する日本 導入国アメリカの実績

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   <テレビウォッチ>深刻な医師不足に迅速に対応するため、看護師の役割拡大に関する検討会がまもなく開かれる。その場で、大きな議論になると思われるのが、『診療看護師』(ナース・プラクティショナー=NP)の導入だと、国谷裕子キャスターは切りだす。

   彼女の説明はなおも続く。診療補助にとどまらず、医師の仕事である診察、治療、処方の1部も担う、専門性を高めた新しい看護師がNP。NP導入で医療の質を保てるのか懸念する声がある一方で、医療崩壊を防ぐには人材の活用は待ったなし、との強い声もあるという。

米全土ではNP14万人

   NP導入に熱心な大分市の岡病院のケース――ここの救急病棟では当直医が1人しか置けず、患者が重なると手が回らなくなる。看護師は心電図なり、血液の検査を早くしたくても、医師の指示なしには出来ない。また、在宅診療に出かけた看護師がお年寄りの床ずれに適う軟膏を処方したいと思っても、やはり医師の許可なしにはムリ。こんなときにNPならば、という成り行きになる。

   そこで、5年以上の経験をもつ看護師に、地元の看護大学で2年間、専門教育を受けさせ、NP向けの人材育成を始める。2008年11月には、厚生労働省に、NPを養成し実際に診察するNP特区の設置を申請した。が、結果は却下。厚労省の医事課長は「医師と同じことが同じ安定性でできるか。それなりの危険性を伴う行為だ」と慎重だ。日本医師会もほぼ同意見。一体なのかもしれない。

   ここで話はNP先進国アメリカに飛び、その活躍する様子が紹介される。救急病棟で手術を必要としない軽症患者を受けもつ。日本では認められない検査、診察、薬の処方も1人で行う。医師のいない地域では、地域医療の中核を担う存在になっている。

   スタジオゲストの川渕孝一・東京医科歯科大学教授によれば、アメリカがNP導入に乗り出したのは1960年代、ベトナム戦争のため、医師が軍医にとられたから。医師不足という点では日本の現状と似ているのである。導入に当たっては徹底的な調査を行ったようだ。

   カリフォルニアのある病院では、試験的に2人のNPに1年間、働いてもらい、前と後で患者に対する影響を比較した。病状把握の緻密さ、処置の丁寧さ、患者の生活指導のきめ細かさなどで、後の方が格段に向上していた。その上、患者の入院日数短縮も明らかになり、病院は本格的な導入に踏み切る。NPには5年毎の免許更新時に数十時間の研修を義務づけ、医療の質の担保に努めてもいる。アメリカ全土では14万人のNPがいるという。

   川渕教授は、日本でも、初期救急、小児科、在宅医療、お年寄りが多い限界集落などでは、NPの出番がある、と述べる。岡病院は、軽症患者の初期診療としていた業務の範囲を床ずれの薬の処方などに絞って、再び特区設置の申請を出した。院長は「認められれば、患者さんと家族は助かると思う」と語る。勤務医も少しは楽になるのだろう。

   厚労省も、アメリカに習って導入に向けてカジを切っていいように思う。

アレマ

NHKクローズアップ現代(2009年6月11日)
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