2024年 4月 17日 (水)

マツジュンの不幸に身もだえ 「愛と正義」と裁判員制

   <スマイル>5月21日から裁判員制度が始まった。それに合わせて、今期はいくつか裁判員がらみのドラマがみられる。これもその1つだが、フジテレビ深夜の「魔女裁判」などと違って裁判員制度そのものがテーマではない。脚本の宅間孝行(旧名サタケミキオ)はやっぱりすごい。「人間愛をテーマにした骨太で純粋なヒューマンラブストーリー」と、臆することなく大上段。その意図はひしひしと伝わってくる。

   ただ、上質なドラマなのにそれほど視聴率が高くないのは、金曜の夜、ヘトヘトで帰ってきた身には、ツラすぎて直視できないのかも。マツジュン扮する主人公と周りの善良な人たちは、どうして次々とこんなヒドイ目にあわなきゃならないの? あんまりだァ! と、身もだえしたくなるような……。

服役から時間さかのぼって

   物語は2015年、主人公・早川ビト(松本潤)が服役している刑務所シーンから始まった。つまり、裁判員制度によって確定した刑に服している未来の時点だ。そこから時間をさかのぼってゆく。毎回、「これは壮絶な生きざまを見せた男の愛と正義の物語である」のナレーション。ね、大上段でしょ?

   ビトはフィリピン人の父と日本人の母の間に生まれたハーフ。色白のマツジュンが顔を黒めにし、メリハリのきいた目鼻立ちを生かしてハーフらしさを出している。ビトっていう変わった名前はフィリピン風なのかと思ったら、母が好みの俳優からとった名前らしい。いじめる方が悪いのは当然だけど、勝手に風変わりな名前をつけといて、ろくに面倒も見ず、いなくなっちゃうなんて無責任な母親だ、と、まず怒った。

   ビトの弁護士・伊東一馬(中井貴一)も、一見軽いが、その奥に韓国籍から帰化して日本国籍を選んだという忸怩(じくじ)たる思いを抱えている。外国籍のままの生きづらさ、親に対する申し訳なさ……。この設定も意地悪くいえば図式的だが、問題提起の意欲を私は買いたい。

   小栗旬がビトに殺される元兄貴分を演じている。情け容赦ない暴力シーンは映画「クローズZERO」の三池崇史監督仕込みか。狂気をはらんだ極悪ぶりを余すところなく表現していて、うまい。また、孤独という同じ場所から出発したはずなのに、善を選んで救われてゆくビトと、ビトにも去られ、悪に殉じるしかない自分の絶望感も漂わし、憎みきれない哀しさも残す。

   一途にビトを慕うのは花(新垣結衣)。あるショックから声を失ったため、セリフがなく、身ぶりと筆談でビトと交流するのだが、その身ぶりがとってもかわいい。声を出せないことで、シンプルな思いそのものを全身で伝えるから、かえって強く伝わることもある。見ならった方がいいかもしれない。

   気になるのは、ビトが働く和菓子工場のおかみさんを演じるいしだあゆみ。水泳もやっていると前に読んだし、元気なんだろうけど、あんまり痩せて見えるので痛々しさを感じてしまう。新米弁護士役の小池栄子がまるまると元気そうだから目立つ、ってだけじゃないと思うんだけど。

カモノ・ハシ

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