東京湾の水中写真 中村征夫が伝えたいこと

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   <テレビウォッチ> 青い海の中の、素晴らしい珊瑚礁を背景に悠々と魚が泳いでいく。魚は人間に驚いて逃げていくはずなのに、魚は彼の向けるレンズに集まってくる。今回のプロフェッショナルは、水中写真家・中村征夫。

   沖縄・慶良間諸島の美しい海に潜り、魚にカメラを向ける。魚が驚かないように、ゆっくり数十分もの時間を掛けてカメラを向ける。呼吸が激しいと気泡におどろいて魚は逃げてしまう。呼吸も押さえて、慎重に。そっと海の中の生きものと対話をするように、ゆったりとした時間が流れている。渡哲也に似た渋い声で彼はこう言う。

   「生きものたちの1番大切にしているのは、やっぱりその暮らしぶり。その環境を脅かさないように気配りしながら近づいていくということが1番大事かなと思うんですけどね」

   私も写真が趣味なのだが、美しい写真というのはこちらが被写体のことを想い、相手に受け入れられないと撮れるものではない。お互いに心を許しあわなければ、暖かな心の通った写真は撮れない。中村は海の生きものに敬意を払い、また彼らから愛されている。だから彼の撮る作品は美しいのだろう。

   中村の潜る海はキレイな海だけではない。東京湾。決して美しい海とは言えない東京湾に潜って33年。キレイとは言えない海で、必死に生きる生物がいる。なぜ彼は東京湾を撮るのだろうか。

   「なんてすごいたくましさ、と僕は思うんです。だって輝いているんです。僕から見れば。写真を撮って、いろんなドラマを撮ることによって、多くの方達に東京湾に目を向けてもらいたい。そして、その一部が、我々のタンパク源にもなるんですよってことを知ってもらいたい。そういうことです」

   汚れた海に目を向けて、もっと環境を良くしていこう、などと彼は一切言わない。私なんかはつい、環境問題に結びつけてストーリーを美しくしてしまうかもしれない。あえてそういうことには触れない中村が、とても格好いい。自分をごまかさない、海を愛する男。久しぶりに、本当に格好いいと思えるプロに出会えた。

慶応大学・がくちゃん

   *NHKプロフェッショナル 仕事の流儀(2009年6月16 日放送)

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