辻井伸行「ドイツ公演」出来映え ピアノ音色に観客が顔色変えた

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   <テレビウォッチ>バン・クライバーン国際ピアノ・コンクール優勝後、社会現象ともなったピアニスト辻井伸行をスタジオに招いた。スタジオ・コンサートのオープニングは、ショパンの「練習曲作品10第4」。ショパンは、最も得意とするところだという。きれいな手が鍵盤に躍る。

左手と右手のコンビネーション

   『辻井ピアノ』の世界を探る番組は、まず「飾り気のない素直な演奏」を魅力にあげる。コンクールで審査員を務めたボストン在住の音楽評論家は、テクニックに頼る演奏家が多い中、新鮮さを感じたとし、「左手で安定した音を出しながら、右手では歌うような演奏ができる。世界でも数少ないピアニストだ」と称える。

   「左手と右手の絶妙なコンビネーション」も魅力の1つだと、番組は伝える。辻井が6才のときから12年間、指導した川上昌裕・東京音楽大学講師は、彼のために左手用、右手用、別々に曲をテープに吹き込み、その数は100曲以上に及ぶという。「右手の重要さ、左手の重要さ、それぞれ分けてインプットし、それが今につながって、自然体で心地よい表現、彼らしさが大きく出てきたとのかなと思う」と恩師は述べる。

   また、「身体全体でうみ出す美しい音色」が魅力と見るのは、作曲家でピアニストの加古隆。鍵盤を叩いたあと絶妙のタイミングで力を抜いて弱い音を響かせている、と言う加古は「美しい音、響きはそれだけで人の心を振るわせる」と語る。

器の大きいピアニストに

   確かに『辻井ピアノ』は聴くたびに心洗われて目が潤むような思いにかられる。その魅力は、音楽好きで耳が肥えているドイツの聴衆をも捉えたらしい。コンクール優勝から3週間、彼はドルトムントの小ホールでの演奏会に臨む。「大して期待しないわ」とか「満足できなかったら帰るつもり」と話していた観客の表情が、辻井のピアノを聴くうちに変わる様子をカメラが写す。

   最初、重苦しい空気に包まれていた会場は大きな拍手に包まれる。アンコールに応えて弾いたのはリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」、コンクールの際に観客を最も盛り上げた曲だ。終わったときにはスタンディングオベーション。彼が目標とする「器の大きなピアニスト」へ向けて初の挑戦を乗り越えたといえよう。

   スタジオに戻って国谷裕子キャスターから、器の大きなピアニストになって行くための課題は、と聞かれた辻井は「まだまだ表現力も勉強不足の部分もあるので磨いて、音楽以外のこともたくさん勉強して立派なピアニストになって行きたい」と言った。

   スタジオゲストは指揮者の金聖響。辻井が14才のとき共演したという金は「楽器から出る音だけじゃなくて、体との接点のもち方がすごかった」と述べる。国谷が、辻井の飛躍する条件について尋ねると、指揮者は「コンクールに優勝してハードルが上がり、周りの期待も大きい。厳しい環境に置かれるけど、1つ1つの演奏会を最高のものにするという気持ちを忘れずに、今までと同じように一生懸命にやると思うので、何も心配してない」と答え、「今度、一緒にやりましょうね。ぜひ、お願いします」と呼びかけた。

   スタジオ・コンサートのラストはショパンの「子守唄」。テレビでも『至福の音色』にひたることができた。

アレマ

   * NHKクローズアップ現代(2009年7月2日放送)

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