2024年 4月 18日 (木)

自分への挑戦と自転車レース 「仕事なし」でもあきらめない

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   <テレビウォッチ>国谷裕子がいつもと違う語り口でスタートした。「日々が、気力、体力との闘いのなかで、ひたすら歩く、泳ぐ、ペダルをこぐ……体との対話を続ける人たちがいる」と。

「遊びだけど、プラスへもっていければ」

   取り上げたのは、先月、福井県で行われた自転車レース。行程は50キロから最長210キロまで参加者次第だが、これになんと2200人もが参加した。思いは人それぞれ。単なる自転車ブームでは割り切れないドラマがいくつかあった。

   150キロに挑戦した愛知県の8人チームの1人、碧南市の杉浦正仁(60)は、電気工事の会社を今春退職したが、再就職先がみつからなかった。

   「ちょっとへこんだけど、まだあきらめてない。完走することで、きっといいことがあるでしょう」という。

   目標は、150キロの間、1度も足をつかずに走りきること。スタートから琵琶湖畔に出て日本海沿いを走り、また内陸にもどるのだが、とくに最後の15キロは急な登りになる。ここを乗り切れるかどうか。

   さていよいよスタート。彼は、とても60歳とは思えぬ快走をみせる。50キロ地点からは、仲間を引き離した。仲間たちから「すごいよ」という声があがる。仲間には、派遣切りで失職中の30代の男性もいた。この男性も「遊びだけど、プラスの方へもっていければ」

   7時間走って最後の難関にさしかかった。自転車を降りて歩く人が続出する中、どんどんと追い越しにかかった。並走するカメラに、

「あれを曲がったら頂上じゃ」という声が入る。そしてとうとう登りきった。目標達成である。「還暦を20歳の誕生日だと思えばいい」

親子3人そろってゴール

   100キロに挑戦した3人家族がいた。山口清則(42)、美樹(42)夫妻と長男の一輝(16)。長男は障害があって養護学校へ通う。

   母は、「社会で自立していけるように、完走して自信を持ってほしい」という願いだった。とくに「最後の坂だけは、降りずに登ろう」

   母が先頭、長男をはさんで、後ろから父が見守る。しかし、70キロ地点で長男が足が痛いと止まってしまった。両親が足にスプレーをかけて励ます。そしてまた、3人で走り始めた。

   だが、最後の登りで、とうとう長男の足が止まった。「ダメダメ」と母の厳しい声が飛ぶ。母はそのまま走り続けた。置いていかれた長男が、「ウオー」と泣き声をあげたが、母は止まらない。歩き始める長男。

   坂の頂上で母は振り返った。すると、長男が自力でこいで登ってきた。「がんばれば登れるんだよと見せたかった。根性あるなと嬉しかった」。3人はそろってゴールのゲートをくぐった。

   自転車が好きな作家の山本一力は、「すばらしいものを2つ見せてもらった。泣き声が耳に残った。両親もすごいし、自力のゴールは間違いなく自信になったろう」という。

   「自分と向き合うスポーツをする人が増えてきた」と国谷。

   山本は「好きなんですよ。スポーツは人と較べたがるが、好きならば較べない。どこまでやれるか、自分を認めてやったら、どんどん楽しくなる。自転車に限らない、スポーツに限らない、何にでもいえることです」といった。

   わたしは山登りだった。あれも順位のつかない、較べないスポーツ。常に自分との闘いだったが、いつも仲間が一緒だった。

ヤンヤン

   *NHKクローズアップ現代(2009年7月6日放送)

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