「日本豊かに」情熱官僚 暑苦しいか感涙ものか
<官僚たちの夏>各期にひとつはこういう骨太のドラマがほしい。官僚といえば、今はバッシングの的だが、戦後日本のグランドデザインを描き、現在までつづく基礎を固めたのは彼らキャリア官僚であったことも事実だ。結果としてよかったかどうかは別として。
このドラマは、彼らの「日本を豊かにする、アメリカに負けない国にする」という熱い志をスタート地点として、日本の戦後史をたどっている。通産省(当時)が舞台になっているのは、戦後の日本を決定づけたのが「産業(イコール工業だが)立国」という方針だったからだ。
佐藤浩市ら「大人の男たち」競演
その志は、明らかに「アメリカとの戦争に負けた」ことを原点とする。その原点を知らない者、または想像力が及ばない者は、「なーんなんだろ、この暑苦しいオッサンたち!」とシラケるかも。逆に、「そうだそうだ、よかったなあ、あの頃は。貧しくとも理想に燃え、みんなよくやってきたんだ、オレたち日本人は」と感涙にむせびそうになる人もいるだろう。
おおむね、シラケ組は先行き不安な現役者、感涙組は年金確保済みの退職者といったところか。私としては、「まあまあまあ、みなさん、早まらずにこのドラマ見ていきましょうよ」と言いたい。ドキュメンタリー映像も多用しながら、昭和30年代のセットもよくできている。当時を知らない人は歴史の勉強になると思います。
話は通産官僚の風越信吾(佐藤浩市)を中心に、堺雅人、高橋克実、西村雅彦、高橋克典、船越英一郎、北大路欣也といった「大人の男たち」の競演で進む。ちなみに出演者たちは、硬い経済用語の多いセリフを乗り切ってシーンを取り終えるたびに、お互いに喜び合ったりして楽しかったらしい。役者ってやっぱり楽しそうだなあ。
年代を追って、各回ごとに日本の産業を支えたモノを取り上げているのもわかりやすくてよい。1回目は自動車、2回目はテレビだった。3回目は日米繊維交渉の予定。当時を知っている人は実際の政治家と重ね合わせて見るとおもしろいと思います。
心に残ったのは、予告編の「オレたちは大臣に雇われているんじゃない、国民に雇われているんだ」という佐藤浩市の言葉。ん? 今の官僚には、そもそも「人に雇われている」という意識があるのか?
しかし、官僚を十把一絡げにして叩いてばかりいても仕方がない。なかには熱い志をもった人たちがいることを信じるしかない。<テレビウォッチ>
カモノ・ハシ