漢族とウイグル族のミゾ 資源と差別と暴動と

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   <テレビウォッチ>新彊ウイグル自治区では、漢族が多い都市部とウイグル族の多い地方との収入格差が3倍になっていたという。20代のウイグル族男性はこう述べる。

「都市部には漢族向けの求人しかありません。ウイグル族にはいい仕事がない。確かに政府の投資によってウルムチの街はきれいになったと思う。でも石油の利益は全部、漢族の手に渡ってウイグルの人の生活がよくなることはなかった」

「共存」への道とは?

   死者192人、負傷者1000人以上(当局発表)を出した新彊ウイグル自治区の暴動は、あるデマが発端だった。広東省の工場で、漢族の女性がウイグル族の従業員に暴行されたというニセ情報が伝わり、出稼ぎのウイグル族2人が死亡する事件が起きた。広東省は、新彊ウイグル自治区からの出稼ぎが多いという。出稼ぎ歴10年のウイグル族男性が話す。

「最初はウイグル族だというだけの理由でアパートすら借りられなかった。漢族がウイグル自治区に来て衣食住に困るなんてあり得ないのに不公平だ。私は一般市民なのに犯罪者みたいに扱われるなんてひど過ぎる。とても許せません」

   また、事件の発生した工場で働く漢族の女性は「(ウイグル族との)つき合いは全くない。話もしない。だって、ことばが違う。ウイグルの人たちは顔つきが野蛮だし、漢族とは全然、違うって、ひとめ見ればわかります」と言った。

   差別される側と差別する側のミゾは相当、根深いものがあったようだ。そこに民族対立を煽る映像がインターネット上に流れ、未曾有の騒乱が燃え広がった。

   シルクロードの要衝、新彊ウイグル地区に漢族が進出したのは60年前、中華人民共和国建国の年。当初、治安維持と農地開拓を目的に派遣された「新彊生産建設兵団」は次第に役割を拡大させる。石油や天然資源が次々と発見され、中央政府が大規模なインフラ投資を開始すると、続々と送りこまれた。

   ここ10年、二桁成長を続けた経済発展の真ん中にいたのは「新彊生産建設兵団」だった。1400もの企業を抱える一大企業集団となり、漢族が殆どの要職を占めた。そして、加藤青延(NHK解説委員)によると「ウイグル族と交流しない閉鎖的な社会をつくってしまった」。30万人だった漢族も、1964年には230万人に増え、今や850万人、新彊ウイグル自治区全人口の40%に達するという。

   抜き差しならない対立を和らげる上で中国政府が取り組むべきは、と尋ねる国谷裕子キャスターに加藤解説委員は、ウイグル族が生まれた場所で安心して生活できる社会環境、雇用の確保、所得の再分配などが必要だとし、「何よりも、ウイグル族の人たちが自分たちのアイデンティティを保障されていると感ずる共存社会を構築することだ」と答えた。

   前出の20代ウイグル族男性は「事件の生んだ憎しみは一生忘れることはない。いま重要なのはお互い理解しあうことだが、それが出来るとは到底思えない」と語った。『共存の道』は限りなく遠いような気がする。

アレマ

* NHKクローズアップ現代(2009年7月16日放送)
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